JR東日本の大スペクタクル・ミステリーツアーはすごいぞ..........!
プレリュードは,木曜日から始まっていた。札幌にいた私に,Kちゃんからのメール『ものすごい風が吹いている。明日そっちは大荒れかも...』とあった。木曜日の夜の北の大地は,風は穏やかだが,めっちゃ寒い。道はテカテカ,カチカチ。翌日の金曜日,昼ごろから降り出した雪はだんだんと激しさを増していた。天気予報によると,東北から北海道にかけて週末大荒れの予想。お客様との会議を早めに終わって,仲間と二人で札幌駅に向かう。18:50発の神戸空港行きは予約していたが,猛吹雪で空港が閉鎖されるかもという不安がよぎる。前にも空港が閉鎖されて帰れなかったことがある。なんとか一つ前の17:30発の伊丹行き変更し早く帰らねば..と航空会社に電話する。『予約満席だが,空港でキャンセル待ちをすれば乗れるかも』との返事あせるが,札幌駅までの道は既に大渋滞。とりあえず札幌16:25発,16:54分着千歳向けの快速エアポートに飛びのる。途中,インターネットで情報を確認していた仲間が,『もう,空港が閉鎖されてます。18:50発神戸行きもフライトキャンセルです』という。週末の大荒れで,土曜日も日曜日も帰れないかも知れない..このまま千歳空港に行くべきか,南千歳で降りて陸路帰るべきか,...本州に渡るには途中の南千歳で乗り換えるしかない。千歳駅から南千歳への帰りの列車のタイムリミットを確認して,千歳空港まで行き状況を確認。空港は大混雑,出発便の案内板は,ほとんどキャンセルの表示,大勢の人があきらめて札幌市内に移動しつつあった。まだキャンセル表示の出ていないJALの関西空港行きの便があった。無理かもしれない...と思って行ったJALのカウンターも長蛇の列。青森行きのタイムリミットまで数分しかない。明日も大荒れで帰れる保障はない急遽,南千歳に向かう。17:19南千歳発-20:14函館着,20:33函館発22:20青森着に乗れば,とりあえず今日中に青森までは,たどり着ける。南千歳の駅の緑の窓口も函館行きの自由席も長蛇の列,並んでいてはとても間に合わない。とりあえずスーパー北斗18号函館行きに飛び乗って,車掌に空き席交渉。無事二人分の席が確保出来てほっと一息。鮭とイクラの弁当とピールで乾杯。おいしい。函館で接続のスーパー白鳥44号に乗り換える。窓は二重窓,ドアも二重..さすがスーパー白鳥。もっとも好きな電車だ。憧れの初めての,津軽海峡トンネル,トンネルに入るのは21:17。トンネルの最深部に到達するのは,21:33。ビールとウォークマンの津軽三味線で盛りたてながら,暗いトンネルの中を見つめ。,最深部の青い光に感動,地下駅も確認。素晴しい旅の雰囲気に浸りながら列車は小気味良く走り続ける。あと,20分で青森に到着というときに山の中の無人駅で停車津軽今別駅だという。『強風で危険なため走れません,いつになったら走れるかは予想もできません』という車内放送窓の外を見てもそんなに強い風ではない。前の特急列車転覆のトラウマか,『羹に懲りて膾を吹く』ちゃうかと思いながら,とりあえずビールを飲んで走り出すのを待っている。そのうち,ものすごい風が吹き始める。横殴りの風。風速20mはあるだろうか。11時頃,どんどん風が強くなり,止まっている列車も倒れんばかりに揺れ始める。さすが竜飛岬。窓の氷雪は凍ってへばりつき,地吹雪は強烈。こんな地吹雪をみるのは真冬の比良山山頂以来だ11:20頃,突然駅も町も全ての電灯が消える。『ただいま,風速40m以上の風が吹き,町が停電しました。風もいつ止むか皆目検討が付きません。この電車も電気が切れると,暖房も全て止まりトイレも行けなくなります。救助隊がこちらに向かっています』という。轟々と吹きすさぶ風に電車がゆらゆらとゆすられる窓の外は,竜飛岬らしい猛烈な地吹雪。『救助隊が,猛吹雪に阻まれて到着が遅れています』の車内放送2:25頃ようやく救助隊がバスを引き連れて到着。『全員,バスに乗り換えてください,青森駅まで行きます。絶対に嫌という人は残ってもいいですが,電気が切れると暖房は全て止まります。トイレも使用できなくなります』真っ暗闇の中,20名ずつ救助隊に先導されてすべる山道をバスに移動しはじめる。猛吹雪の山道,青森までは45kmほどある。山道ですべって,谷底に落ちたくない。私と仲間と,約7名は列車に残ることにする。第一陣のバスが出る。あきらめて寝ようとしていたら3:30頃『バスに乗れなかった人のためにタクシーが到着しました。この先列車は倒木で進めません。函館に戻るかも知れません。全員降りて,車で青森に移動してください』函館に戻るのは勘弁だということで車外にでると,猛地吹雪。まるでブリザードだ地面の雪は吹き飛ばされて,白い煙幕になり前も見えない。猛吹雪が顔に吹きつけ,強風で吹き飛ばされそうになり,まともに前に進めない。かなりの人がこの道を避難したはずだが,地吹雪でかき消され足跡もない。かなり厳しい自然環境,こんなところでガーデニングはどうしておられるのだろうか...地吹雪で前もみえない,ズルズルと横滑りしながら。タクシーは隊列を組み山道を進む。山道を滑りながら途中パトカーに先導されようやく青森駅に到着。時刻は4:50。『スーパー白鳥のお客様は,列車ホテルが用意してあります』指定の列車は,暖房も効き,毛布も支給されている。JR東日本なので全席禁煙,タバコ臭くはない。JR西日本だったら列車ホテルも臭くてたまらないだろう。そのうちに空腹に気が付く。仲間が,駅そばが開いているのを見つけてきて早速腹ごしらえ蕎麦屋のおばさんと取り留めのない会話『こんなん,しょっちゅうあるん?』『しょっちゅうは,ねえ!。列車ホテルがでぇるのは,一年にいっけーぐらいだべ』『この店って,いつもこんなに早く開店してるん?』『いっつもおわぁ,6時ぐらいだど。今日は,列車ホテルさ,でるつうから,早あくあけたんだべさ。今日は,弁当さ,でるど』そばを食べる前に言ってほしかったが,5:50,ホタテ弁当とお茶が配られる。『東北本線,津軽海峡線,奥羽本線は豪雪のため止まっています。スーパー白鳥のお客様は,朝ごはん食べ終わり次第,バスで八戸までお送りします』そばを頂いた後だが,おいしいホタテ弁当はすんなりおなかに収まる。6:10,八戸行きの特別バスが出る。雪の一般道を滑りながら走り,9:30八戸駅に到着。八戸駅の緑の窓口も長蛇の列。十二時過ぎの列車まで満席。それでもと自動販売機で,なんども列車変更を試みて,10:06発東京行きの『はやて』を確保。『はやて』が仙台を過ぎる頃には,ぽかぽか天気。昨夜の猛吹雪がうそのよう。13:30東京発新大阪行きに乗り換え...家に着いたのは17:30.約24時間のわくわくするミステリーツアー。山奥の駅まで猛吹雪の中を救助に来ていただいてホタテご飯とお茶も頂き,青森から八戸まで別仕立てのバスでお送り頂き....その間『ご不便をおかけして申し訳ありません』と誤り続け..何もJR東日本のせいではないと思いながらお客様中心の考えが行き渡っている,JR東日本に改めて感謝。JR西日本,JR東海では,こんなことはありえないと仲間も言っていたJR西日本だと,いくら列車ホテルをだしてくれても,停車中の車両はタバコの煙で臭くてたまらないだろうし,山奥まで45Kmもバスとタクシーで救助に来てくれることはないだろうし,ましてや縦割りの会社で代替運行のバスまで用意してくれるなどということは決してないと思う...つづく