美貌の青空
「美貌の青空」(筑摩書房、87年)という本がある。舞踏家、土方巽氏、86年の逝去直後に刊行された遺文集。2部構成となっており、前半が土方氏の詩文、後半が彼の死に寄せられた追悼文集だ。始めてこの本を読んでから、、私は、氏の文章に嫉妬し続けている。司馬遼太郎の構成力、宮尾登美子の近年の作品におけるシンプルな美しさ、詩歌では萩原朔太郎、高村光太郎、尾崎放哉など、嫉妬してやまない文筆家はたくさんいるのだが、土方巽はまったく別次元の存在。上手い下手でいえば、下手な文章。そりゃそうだ、舞踏家だもん。上手くなくて当然。でも、凄みのある文章を書くんだ、この人。「屋根からころげ落ちたとき、口に碍子をくわえていた。これだけの理由で故郷を追放された男の、あの風呂敷を握った掌のことを考えると、途端に真っ黒こげになってしまう。」身体からあふれ出るような文章。筋肉の軋みや汗が言葉になっているような・・・優れた舞踏家にしか書けない。とても真似できない、だから嫉妬する。ああ、こんな文章とか詩とか書いてみてぇ~。OOctober 21, 2009 11:33:01 PM