今日読んだ本 「東京タワー」
久々にこのテーマでの日記。同僚に借りて、一気読みしてしまいました。いつもと違った文体になりそうですが・・作者のリリー・フランキー氏。最近は「おでんくん」でも人気があるし、テレビでもよく見かける。なんでもこなすマルチタレントのような印象だが、この本を読んで一気にイメージがかわってしまった。少し年上のようだけど、ほぼ同年代。まず子どもの頃の原風景が重なってしまう。育った町の雰囲気はだいぶ違うし、男女の差はあるけれど同じ時代の空気をもった文章に自分の子ども時代がつぎつぎに頭に浮かんでくる。遊びや流行った曲、出来事。テレビゲームもなく、危険な大人も少なく、一日中外で遊んでいた小学生時代。ただなんとなく東京に憧れていた高校生のころ。親元から離れてひとりになりたかった。私は叶うこともなかったけれど、著者は高校から一人暮らしをし、大学で東京へ。そんな子どもの頃からの家族、母との関わりを描いたこの本。最終的にはその東京で母を看取るのだけれど、淡々と日常を切り取る文章で、でも引き込まれてしまう。著者の母はガンでなくなり、夫の父も昨年ガンで亡くなった。私の母も昨年手術をした。親を失う恐怖というのは、若い頃はいつかは来るとわかっていても現実感はなく、どこか人ごとだった。でも年々その恐怖が現実のものとして迫ってきている。友人から届く喪中欠礼のハガキが、「祖父母死去」から「父母の死去」へと年々変化している。当の自分も、今年の賀状は欠礼することになったのだ。母の病名を聞いたときは、頭の中が真っ白になった。手術後元気で過ごしている母を見ると、去年のことがうそのように思われるけれど、まだ1年もたっていないし、いつも頭のどこかに再発の文字が潜んでいる。そして自分自身が母親の立場ではあるけれど、同時にいつまでも母の娘なのだと強く実感する。母を失うという恐怖、地面がなくなってしまうかのような不安感というのは、きっと「子ども」にとって共通のものなのかもしれない。(同時に子を失うかもしれない世の中でもあるのだけど こちらの恐怖は想像すらしたくないものだ)読み終わった後にはまぶたが腫れ上がっていた。日々の忙しさにかまけ、何の親孝行もしていないことに罪悪感を覚えつつも流されていく毎日にずしんときた。おすすめの一冊です。