escape
去年の受験の日から、今日までほとんど手でペンを持って文を書く事がゼロに近かったらしい。絵を描く為にシャープペンや筆ペンや0.25のペンは毎日のように持っていたのだけど、文字を書くことが全く無かった。 だから今日のテストで自分は一瞬だけ「れ」の書き方が思い出せなくなっていて焦った。他の段落で「擁護」は普通に書けていたのに「れ」がどんな字かが一瞬思い出せなくなっていた。いわゆるタイピング癖による漢字忘れに自分はひどく新鮮な気分を覚えた。 ペンで絵は描くもののペンで字を書く事が無駄に嫌いで、特にとある必修授業のレポートが手書きと指定されてたりしたら、自分はレポート評価Aや満点を貰ったりは出来なかっただろう。自分が文章作成に求めている最大のものがイメージを失わない速度のスピードであるようだ。ペンでは考えを成文化しているうちに考えが逃げてしまうように思える。 特にノートをとるという事にも非常に嫌悪感を持っていて、河合塾にもノートを持っていく事は殆ど無かった。文字を書いて覚えるよりも耳と目で覚えたほうが功を奏した。ことに、センター対策授業ばかりとっていて、解答もマークシートな始末で文字を書く機会は更に乏しかったように思える。 しかし、その頃から毎日指ばかり使っている。指を使う事が趣味の全てである。コントローラーをおしたり、絵を描いたり、弦をおさえたり、パソコンのキーボードを叩いたり。指だけはどんなヒマな日も忙しい。ただ文字は書かない。 そのような文字を書く事嫌いな自分の、たまに書いた文字を見て人は「綺麗な文字を書くね」とか言ったりする。仮にそうで自分が綺麗な字を書くとしたら、恐らく綺麗な字は、書道よりは総合的な絵のデッサンによって養われることになる。しかしデッサンによって「れ」が書けなくなったりもする。