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2008年05月02日
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カテゴリ:日記
4月24日木曜の夜、仕事関係のチェルシーのギャラリーを訪れた後、27丁目10番街の通りに出ると、どこかで見たことのある女性が歩いているのに気がついた。その人は彼女と同じビルに住む共通の知人の一人で、プロのメークアップアーチストだった。テレビのロケでここにいるとその人は言い、私が7番街の地下鉄駅まで行くのを一緒に歩いてくれた。その間、その人に、彼女に最近会ったかどうか聴いてみた。その人なら彼女が今どうしているか知っていると思ったからだ。しかしその人も最近会っていない、と言うだけだった。そしてその夜11時過ぎに、もう一人の共通の知人から電話がかかってきた。その人は14年前、私に彼女を紹介した人だった。その人はいつになくもどかしい話し方で、彼女の名前を数回繰り返し、そして言った。「シーイズゴーン。彼女は行ってしまった」。え、それはどういうこと? その人は言いにくそうに、しかし一気に話し始めた。4月14日、彼女が住むビルの屋上から飛び降りたことを。そこには短いノートが残してあり、「母を悲しませたくなかったので、母が逝くまでは待とうと思った。しかしもうこれ以上は待てなかった」、とあったという。NYでは自殺は罪となるので、彼女の体はすぐ火葬されて、灰だけ母親のもとに送られ、葬式は挙げられなかったと。私以外にも彼女が小さい品を送った相手は二人いると。「なぜ、それが起こった日に教えてくれなかったの?」という私の問いにその人は、「ショックであなたの仕事を中断させたくなかったから」と言い、「いずれ私たちで彼女のメモリアルをしよう」、とも言った。次の月曜に彼女の姉が荷物の引き取りにやってくる。何か欲しいものがあったら言ってくれ、とも言われた。今は彼女の部屋は大家によってカギがかけられて立入禁止になっているという。日本人のルームメイトは幸い日本に帰国中で、例の同棲相手の男性は、亡くなる1週間前に彼女に部屋から追い出されたそうだ。

このことを聞いて以来、私は何とも言えない気持ちでいる。何で私は彼女に連絡しなかったのかーーそれは彼女の古い友人すべての気持ちだった。みんな彼女が踏ん張ることを信じていた。誰が悪いのでもない、彼女自身に問題があったから、彼女がすべての原因を作ったのだ、とその人は言った。その通り、彼女はあまりにも弱く、流されていった。あれほどの恵まれた体と容姿、頭脳、パーソナリティを持ち、人を愛し、人に愛され、すべての可能性が広がっていて何でも自分の意志で積み上げていけるこの街で25年以上を過ごし、彼女は流されて消えて逝く方を選んだ。そして私たちに、重い自己嫌悪と、やるせない苦い喪失感を残していった。彼女は言い意味でも悪い意味でも、私たちのあらゆるエピソードに登場しすぎていた。どの写真にも彼女の美しい微笑みがあった。私のニューヨーク生活の半分以上に存在していた彼女の記憶は、生涯忘れることはないし、これからもずっと何度も思い出していくことになるだろう。





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最終更新日  2008年05月03日 17時50分23秒
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