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カテゴリ:旅に出て人と会う
【9月20日・日曜日】 飛行機の出発が3~40分遅れたために夕べ遅くと言うのか、今朝早く、と言うのか、 最後のハヴァタシュのシャトルバスに乗ったのが、1時半少し前だった。1時40分に空港を出て、2時15分頃タキシムの終点に着き、タクシーがなかなか拾えず、家に着いたのは3時過ぎだった。 今回のコンヤ旅行はアブデュラーさんとシェンギュルさんへの二つのお悔やみと、アブデュラーさんのお母さんの墓参り、元コンヤ日本文化センター所長のメフメット・アリさんの墓参り、その他ポストニシン様に相談されたとある案件の解決のためのミーティングがあった。 そして2年半に渡る付き合いの、カラタイ大学の日本語教師ミチコさんの転職に伴う引っ越しで、もうコンヤでは会えなくなるので、送別会も兼ねた女子会、その他、メヴラーナの子孫であるエシンさんやヌレッティン先生、アヌ・ホテルへの訪問、コンヤ随一のキリム問屋社長、アスムさん訪問など、幾つも用事を兼ねての旅だったのである。 その件についてはブログに後ほど書くことにして、まずは気に入っている1枚のスカーフについて話をしたいと思う。 コンヤに行く前の、15日のこと。チュクルジュマのわが家の近くに住む大部屋女優のシュクランさんとすれ違ってちょっと立ち話になったとき、とても素敵な色のスカーフを肩に掛けているのを見た。 「あら、シュクランさん、それとても素敵よ」と言うと、彼女はさらりとそれを肩からはずして「気に入ったならあげるわ」と、気前よく私にくれたのだった。 「いえいえ、いいのよ、貰っちゃあ悪いわ、せっかく愛用しているのに」 「なんの、なんの。いつもお茶菓子だのチョコレートを貰うお礼だわよ」 ところが、貰ったのは嬉しいが、なんだかスカーフの縁かがりのミシンの縫い目がとても怪しく、ガタガタに曲がっているうえ、布そのものが紫や黄色っぽいのに白い糸を使い、およそぶざまに縫ってあった。 そのままではどうにも気になるので、肩にかけて両端を縫い合わせ、ボレロの袖口のようにしてコンヤに行くとき羽織って行った。 コンヤ到着2日目に、黒海沿岸の郷里の洪水で、親類の人々を失った仕立て屋のシェンギュルさんにお悔やみに行った時に、そのスカーフを見せたら、 「あらら~、なんてチルキンな(みっともない)縫い方、マダム・カセ、すぐ直してあげるから、1~2時間預けて行って。」というので、首に当たるところを直線裁ちではなく、襟ぐりのようにカーブをつけて縫い直して貰うことにした。 曲がった縫い目や布地の色など考えずに有り合わせの糸で縫ったらしいそのスカーフの縁かがりなどの古い糸を、ブチブチ音を立てて引き抜き、折り目もきれいになるよう、アイロンをかけてから縫ってあげる、というのだった。 縁かがりのいい加減な縫い方が気になってたまらないシェンギュルさん。 プロの手さばきで見る見る古い糸が引き抜かれて行きます。 2時間後、スカーフを受け取りに行ったら何ときれいに出来上がっていたことか、びっくりしてしまった。 「そうよね、これがプロの仕事よね」と言いながら、私も羽織って見ると思わずため息が出たくらい、見違えるようにきれいになっていたのである。 シェンギュルさんは私がいくら言っても代金は取ってくれず、「いいの、いいの。お悔やみに来てくれたことが本当に嬉しいわ」と言うのだった。そして彼女は、仕事場の片隅で何度もミチコさんや、一緒に立ち寄った女子会の育子さんに写真を撮って貰っている私を、実に満足げに見ているのだった。 このスカーフを見たらもしかするとシュクランさん、返して、って言うかも知れないわね、と私達は冗談を言い合った。 大満足の私を見て嬉しそうなシェンギュルさん。ミシンを踏んで女の子3人を 大学に行かせた頑張りや。まだ40歳を超えたばかりのトルコ版肝っ玉母さん。 このイキンジ・エル(中古)のスカーフが幸せをもたらしたかのよう。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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