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madamkaseのトルコ行進曲

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 marnon1104@ お久し振りです (。≧ω≦)ノ!! kaseさんのお誕生日だったのですね。 お元…
 marnon1104@ Re:トルコでシュウマイはいかがですか?(07/08) kaseさん、こんにちは(*'▽')♪ …
 madamkase@ Re[1]:渡航記念日(03/16) 高見由紀さんへ こんにちわ、イスタンブ…
 madamkase@ Re:渡航記念日(03/16) marnon1104さん、こんにちわ。 3月に書い…
 madamkase@ Re:トルコでシュウマイはいかがですか?(07/08) ひなのさん、おひさしぶりです。 トルコは…

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2015年10月21日
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【10月21日・水曜日】


 去年の9月10日、私は軍事博物館に一つ提案したいことがあって出かけて行った。
「メフテル軍楽隊にもう一つチームを作って、本隊が留守の時でも、メフテル・ファンや地方や外国からの観光客をがっかりさせないで下さい」と奏上してほしい、と言ってメティンさんを訪れたのである。

 本来はコンサートのある筈の日なのに、メフテル軍楽隊が外国や首都アンカラや地方都市への出張公演に出かけていて、博物館の入り口に「本日、コンサートはありません」と無情な張り紙1枚があるだけ。はるばる来た人々の無念の思いを、私自身もよく知っているからだった。

 ここ数年は、軍事博物館の電話番号を聞いておいて問い合わせたり、メティンさんの携帯も教わったので、予めスケジュールを知ることが出来るようになったが、ガイドブックなどにはコンサートは月・火を除く週5日間毎日15時から、と出ているので、今日は大丈夫、と思って来てみるとメフテル軍楽隊は外国に遠征中、などと1週間も10日も留守になることがしばしばあるのだった。


 去年のその日、メティンさんは上機嫌で私を迎え入れ、「よくぞ聞いてくれました」と言わんばかりの笑顔で、「もう一組、軍楽隊を拵えて、休館日でもないのにコンサートがない、などという状態を解消しよう」と既に同じ企画を検討中であり、人件費・経費などの財源、新規隊員の養成の問題などがクリアー出来次第、1年以内に実現に向けて動き出す手筈になっているとのことだった。

「加瀬ハヌム、ですから遠からず朗報をお届けできると思います。ご心配いただきありがとう」とメティンさんはニコニコした顔でそう言った。


 それから1年、ついにその日が来たのである。今年の春には25人前後の新しいメフテル隊員希望者を各地の軍隊内から募り、彼らはメフテル軍楽隊長デニズ少佐(当時大尉)ほか、各パートの古参隊員から連日特訓を受けてきた。

 もちろん本隊と留守部隊は人数の規模が違うだけで、新旧のメンバーが混成部隊となって演奏するので、本隊との技量の差もなく、本隊が昨日20日に、10月29日の共和国創立記念日に向けてアンカラに出発した後、満を持してデビューの運びとなったのだった。

 日常のシフトを組んだり、隊員の休暇やその他福利厚生の諸々の事務に関わる責任者としてのメティンさんの安堵と喜びようは一通りでなく、「やあ、加瀬ハヌム、21日には見せたいものがあるので12時までにいらっしゃい。そして一緒にお昼を食べた後、あなたに一番見せたかったものを見せるよ」とメティンさんに呼ばれて、私は本日また軍事博物館にやって来たのだった。


 メティンさんの部屋に行くと、ロッカーの上に置かれたチョルバジュ・バシュの、孔雀の羽根のついた大きな帽子が目に付いた。

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白いフェルトの帽子。鮮やかな赤い布と金色の縫いとり。さらに豪華な孔雀の羽根飾り。


 メティンさんは嬉しそうに、「今日は私がチョルバジュ・バシュをやるんだよ、加瀬ハヌム」と言った。
「ええ~っ、うそ!」と言うと、彼はわざわざ席を立ってロッカーを開いて見せてくれた。おやおや、本当に、ハンガーにつるされた赤いコートの襟と前立てに縫いつけられた3本の金のジャバラが見えたのである。


 オルドゥ・エヴィで軍楽隊コスチューム縫製部のトゥーバさんと一緒に、メティンさんに昼食をご馳走になり、1時半頃部屋に戻って来てチャイを飲んでいると、ほどなく、若い兵卒がチョルバジュ・バシュの靴やズボン、クルチ(太刀)や革帯、短剣などを抱えてやってきた。

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メティンさんの着替えを手伝うのは、旗手を務める若い兵隊さん。

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古参の隊員にチョルバジュ・バシュの作法を教わるメティンさん

sahou  
広い廊下に出て、クルチ(太刀)の抜き方、仕舞い方の練習です。

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出来あがりました。お腹に何か巻いてでっぷりと見せています。

チョルバジュ・バシュ 
チョルバジュ・バシュ姿のメティンさんが似合うので恐れ入りました。


 彼に手伝わせてたちまちメティンさんはチョルバジュ・バシュのコスチュームをつけ終わり、次にやはり軍楽隊の古参の隊員に舞台に立った時、どういうタイミングで停まるか、何を言うか、観覧席に向いてどうお辞儀をするか、などなど教わり、いよいよ広い廊下に出て帽子もかぶり、つけ髭も貼って、クルチの抜き方、仕舞い方を習い、すっかり支度が出来上がった。

 その姿でメフテル棟の1階に下り、もう既に着替えて集まっていた、本日デビューの隊員達の前に行くと、ちょっとしたどよめきが起こった。メフテル軍楽隊の本隊はアンカラに行っているが、もちろん留守部隊のメンバーにもベテランの隊員が混じっていて、新人ではあっても先週は予行演習的に何度か狭いチャドル(天幕)・サロンで演奏を繰り返したので、舞台度胸はかなりついているようである。

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部下を引き連れたチョルバジュ・バシュ姿のメティンさん、かっこいい!


 メティンさんは留守部隊を預かる総大将なので、だれもが本当に彼が舞台に立つと思っていたのだが、実はこれは、メティンさんが新しい隊員達をリラックスさせようと試みた「どっきりカメラ」風なサプライズで、こうして本日仕事始めの部下達を激励に出て来たのだった。

 そういうところに、部下思いの彼の人柄が出ていると思う。茶目っ気たっぷりに、一度は着たいと思っていたチョルバジュ・バシュ姿で記念撮影したのだった。そして私を母だと想っているといつも言うからには、ぜひ見せてやりたいと呼んでくれたのである。

 私も彼の部下達と並んだ記念写真を撮影したいと思ったのだが、その少し前に2階の廊下でメティンさんと並んで写して貰おうとした時、カメラを持った兵隊さんが緊張して手を滑らし勢いよく落としてしまったので、北九州の親友・二輪熊さんに貰ったお姫様カメラは廊下にぶつかり、バウンドしてあえなく壊れてしまったのだった。

 その若い兵隊さんは、留守部隊の最高司令官の前でもあり、がちがちに恐縮して平謝りに謝るので「気にしないでいいのよ、ジャポン・マル(日本製)は頑丈だからすぐに直るから」と慰め、これから舞台に立つと言う青年を悲しませてはならない、とこちらもやせ我慢でにこにこしていた。

 庭でみんなが集まり、記念撮影した後、そのときになって初めて本当の留守部隊のチョルバジュ・バシュ役のハサンさんが、同じ赤いコートで登場したので、やっとわけのわかった隊員達の間にどっと大笑いの声が湧き起こった。

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偽チョルバジュ・バシュのメティンさん(左)と、本物のハサンさん。


 メティンさんの、手の込んだ仕掛けは新人達の緊張をほぐすのに十分だった。かくてクルチ(太刀)と革帯をハサンさんに返したメティンさんが部屋に戻って、アンカラにいる本隊の総司令官である、ムラット中佐に電話を入れ、「大成功ですよ、コムタン(司令官)」と嬉しそうに電話で話しながら、彼自身も興奮していてよくよく嬉しかったのだろうと思う。
 
 かくてムラット中佐とメティンさんが打ち合わせて、もう1人のチョルバジュ・バシュのハサンさんと、3人で組んだ”新人達の緊張をほぐすショー”は終わりを告げた。

 そのあと、普通の軍服に着替えたメティンさんに送られて、舞台裏のエレベーターでコンサート・サロンに行き、彼は来客の軍関係者の相手をすることになっているので一番高い列の席に座り、私は高い階段を下りて最前列から2番目の左端の席に座って見物することになった。


 やがて、メフテル紹介映画が終わり、もう外は寒くなっていたので、中庭からの行進は無くなったが、サロン脇の広い階段を行進曲に合わせて手を振りながら、サンジャクタル(旗手)や鎖帷子の兵士などが降りてきて舞台に並び始めた。楽器を持つ演奏者達は舞台の袖から登場する。

 バイラムの時などは、本隊であっても編成人員を少なくして隊員達が交代で休暇を取るが、半月形の輪もやや縮小され、トルコ国旗で星の位置に当たる場所でチョルバジュ・バシュが挨拶をし、隊員が全員で「メフテル・バシュ! ヘ・ヘーイ」と呼ぶと、チョルバジュ・バシュが引っ込み、そのあとにメフテル・バシュが太鼓の音と共に真ん中に進み出て隊員達の方を向き、「メルハバ~、へーイ、メフテラン、!」と呼びかける。(メフテランはメフテルの複数形)

 隊員達も「メルハバ~、メフテル・バシュ!」と答えて、演奏が始まるのだった。よく見に来ている私でも、本隊と留守部隊は遜色なく立派に見えた。今日は学生の団体がいたので観覧席はかなり埋まっており、第二メフテル軍楽隊は何一つ手違いもなく、大勢の観客を得て輝かしいデビューを飾ったのだった。

 留守を預かるメティンさんを、ムラット中佐もデニズ少佐も心から信頼しているし、愉快なサプライズで、新人隊員達を激励したメティンさんは、本日の大いなる立役者でもあった。







   かに座さそり座いて座
かに座さそり座いて座



madamkaseのトルコ本 「犬と三日月 イスタンブールの7年」(新宿書房)




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Last updated  2015年10月28日 17時41分51秒
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