固焼きそばもトルコではご馳走!
【10月7日・月曜日】 9月4日にテキルダーで固焼きそばを作って以来、あの味が忘れられず、1人でも時々作っては食べていたが、10月2日は豆腐の日と言うことで、エルデム縁(ゆかり)さんに注文した豆腐が今日届けて貰えることになった。 まだ私が正式に移住して来る前の、1994年の春、イスタンブールのトルコ語学校で知り合った縁さんなので、気心も知れているし、うちまで運んでもらう代わりにブランチを一緒にしようよ、と約束したのだった。 9月の終わりからずっとなんだかんだと忙しく、直近の土、日、も続けて外出していたので掃除が滞っており、7日は朝のうちに掃除と料理の支度だ、と決めて、いざ掃除にかかったら、なんと岡崎さんの送別会の時と同じ現象が起きてしまった。 美由紀さんに掃除して貰ったとき、最後にマヤちゃんが散らかしたニンニクの塊を吸いこんでしまっていたらしく、送別会の始まるという日に、ジハンギルの交差点で待ちぼうけを食らって、時間が切迫していた上にいざ掃除機をかけたら、音ばかりで何も吸いこんでくれない、と言う事態。 そのときは箒と塵取りで何とか掃除したが、数日後にやっとホースからニンニク玉を取り出すことができたので、縁さんが来る前に掃除機をかけたら、最初は順調だったのに、途中でまた何かを吸いこんでしまったのだった。 吸い込んだ瞬間にちら、と見えたのが、以前いただき物をした時、箱にかけてあった紐を束ねたものだった。猫が遊んで本棚の下にもぐってしまっていたらしかった。 しかしまあ、今度はよくよくぴったりホースの中ほどにはまってしまったと見え、どうにも取り出せない。そしてもちろん、何一つ吸いこんではくれなくなってしまったのだった。 ホースの取り付け口が双方とも湾曲して作られているので、長い棒があってもまっすぐには入って行かないためにお手上げなのである。 いくらやっても駄目なので、強い水圧で押し出してはどうか、と蛇口に合わせて、反対側を浴槽の中に落とした。高低差が必要だからである。 しかし最大の水圧に蛇口をひねっても、ホースの口の周りから飛び散るだけで、一向に障害物を取り除いてはくれないのだった。あまつさえ、紐は厚い布地の織物で、水を含んだから膨張し動かばこそ。 仕方なく掃除機は諦め、ホースを洗って台所の窓から外に干し、またまた紙を濡らしてちぎり床にまいて掃除をすることになった。私って、よくよく日頃の備えが悪いので、大事な時に神様にからかわれるのね、と自戒しつつ、汗だくで箒と塵取りを使ってゴミを掻き集め、それが済むと今度は台所に飛んで行って慌てて野菜を刻み始めた。 縁さんからタキシム広場に着いた、と言う電話が来たのが約束の11時を10分ほど回っていたので少し時間稼ぎが出来た。 11時20分、縁さんがついにわが家の入り口に到着、あわてて出迎え、幸いに余りに待たせることもなく料理の方は次々ことがうまく運んで、食卓に着いたのが12時少し回った頃。 「何年ぶりかしら~、固焼きそば!」と嬉しそうな縁さんを見て私もよかった~、と胸をなでおろした。1本だけ残っていたビールで乾杯し、土曜日の宮崎公園でのあれこれだとか、昨日のダウンカフェでの様子だとか、話は尽きない。ほんとうはもっともっといてほしいのだが、午後1時を回ったので、彼女は次なる約束の場所に向かわなくてはならない。 2人で1本が適量。昼間だし・・・例によってタマオが鎮座。 固焼きそばと、とろろ芋とほうれん草のおひたし、ご飯もあります。 出がけにお代を払おうとしたら「こんなにご馳走になったので、貰えません」と言う。縁さんも人がよくて、苦労して作っている商売ものの代金すら貰いにくいタイプの人なのだった。 「駄目、駄目、商売で作っているんだからそれはそれで払います」と私。縁さんに損をさせたくない。「加瀬さん、私はご馳走になった上に大根を1本貰ってるんですから。じゃあせめて、納豆の分はお土産と言うことで・・・」など譲り合いの押し問答が続いて時間が押してきてしまった。 タキシム広場のバス停まで遠いし、坂がきついのでタクシーを呼び、結局縁さんは豆腐の分だけ受け取ってあたふたと帰って行った。 何だか全然昔と変わらない私達。 いい人はいいね。 川端康成の「伊豆の踊り子」で、踊り子薫が旅をする青年「私」のことを、母親や兄嫁にそうつぶやく場面がある。 私達はお互いをそう思っているから友情も長続きしているのだろう。 その晩、私は冷や奴と豆腐の味噌汁を作り、野菜ばかりで極めて健康的な夕食を楽しんだのだった。 冷や奴、赤カブおろしとオクラ、ルッコラとトマトのサラダ、豆腐と油揚げの味噌汁、ほうれん草のおひたし、でもビールなし。 madamkaseのトルコ本 「犬と三日月 イスタンブールの7年」(新宿書房) 「チュクルジュマ猫会」お知らせ ◎※△ 海泡石(リュレタシュ)がネットで買えます! イスタンブール唯一の海泡石アトリエ、シナン・ウスタの作品がついにネットで購入出来るようになりました。追々品数も増やしていくとのことです。ぜひご覧ください。ネットショップ 「リュレタシュ」