夢みるきのこ

　俳句17音詩とそれに準じる短詩表現は、わが国セレブリティーの伝統詩としての和歌・連歌の形式を借用しながらも、そうした権益や地位の上にあぐらをかく貴族の伝統に反抗する意図をもった人たちにより、生み出されたものです。

　したがって、それは本質的に反逆精神に貫かれたものであることによってかろうじて表現たりえるものだったのです。伝統や権威をすべて笑い飛ばし茶化してしまう多分に毒を孕んだ詩形だったのです。それこそが俳句詩の本領で、アンチ伝統こそがそのいのちなのです。

　しかるに、自由律俳句や口語俳句の台頭と区別するために有季定型詩こそが俳句だとして伝統俳句というまったく矛盾する名称が大手を振って歩き始め、現代に至っています。

　このことの矛盾を俳句を手掛ける人それぞれがもっと真剣に向き合う必要がありそうです。