カテゴリ:汝の名~三千円~舞いあがれ!
朝ドラ「舞いあがれ!」は難しいテーマに挑んでますね。
舞と御園が立ち上げた「こんねくと」は、 子会社の形をとってるけど、その業務は生産者組合に近い。 つまり、 生産者どうしをつなぎ、それを消費者に媒介して、 商品開発やブランディング、そして小売りまで担うってこと。 日テレの「ファーストペンギン」では、 漁協の仲介を取っぱらって、 生産者と消費者が直接つながる仕組みを作っていましたが、 舞と御園の試みは、それとは真逆の提案です。 むしろ、農協や漁協みたいに、 まずは生産者どうしが繋がる仕組みを立ち上げようって話。 組合ではなく、子会社の形をとるのは、 そのほうが機動的で小回りも利くからだと思う。 ◇ ドラマを見ていて気がついたことだけど、 おそらく製造業(第二次産業)の場合、 農業や漁業(第一次産業)とは違って、 元請けと下請けをつなぐ「商工会議所」は存在しても、 生産者と消費者をつなぐ「生産者組合」が存在しないのよね。 今こそそれが必要とされてる…って話でもある。 これは、 「あさが来た」や「青天を衝け」の、 五代友厚とか渋沢栄一の話にまで遡るけれど、 もともと商工会議所ってのは、 国や自治体や大企業による巨大事業と、 下請けの中小企業とを連絡する仕組みであって、 農協や漁協のように、 生産者と消費者をつなぐ機関ではなかったのだと思う。 ◇ 大企業による元請けの場合は、 あくまで需要に合わせて供給の形を考えるので、 通常は、収益性の高い事業に特化しながら、 大量生産によって価格を下げていくことになります。 しかし、 収益性の高い事業にのみ特化することは、 その反面で、技術の多様性を失うリスクにもなる。 本来なら、たとえ少量の生産であっても、 多様なニーズに応えていくほうが、 技術の多様性を守っていけるし、受け継いでいける。 ◇ 生産者組合の場合は、 供給側の立場から需要を掘り出すことになります。 大口の顧客や大多数の庶民に、 大量生産による低価格商品を売るのではなく、 むしろ富裕層や事業者・法人などに、 少量の高価格商品を売る形になるはずです。 ただし、収益性が高まれば、 かえって低価格の大量生産ベースに乗せられてしまうので、 その場合は、アイディアや権利を売って、 大企業による海外生産などに委ねる形になるのかもしれない。 ◇ 日テレの「ファーストペンギン」の場合は、 曲がりなりにも現実の成功モデルがありました。 しかし、 今回の「こんねくと」の場合は、 かりに何らかのモデルがあるにせよ、 はっきりとした成功例はまだ存在しないのだと思う。 なので、これは、 ひとつの提案であり、思考実験の可能性が高い。 この脚本が分かりにくいとすれば、 それは、このビジネスモデルそのものが、 まだ十分に確立していないからだろうと思います。 ネットを見ても、 このコンセプトを理解した記事はほぼ皆無で、 あいかわらずドラマ評論家の無能っぷりを示しています。 脚本の内容が分かりにくくなると、 視聴者のなかにもアンチが蛆虫みたいに湧いてきて、 SNSではまた「反省会」が盛り上がりはじめてますが、 理解できないものを叩くのが大衆心理の常だとはいえ、 それは多分に大衆側の理解力の欠如の問題でもある。 ◇ 今にして思えば、 菱崎重工の下請け生産を断ったのも、 ひとつの伏線だったのでしょうねえ。 その意味で、今後のIWAKURAが、 下請けとして飛行機などの部品生産を担う可能性は、 ほとんど無くなったように思える。 現実の三菱重工も、 舞い上がるどころか、 いまやどんどん舞い落ちていて、 国産飛行機の事業からは撤退、 H3ロケットの打ち上げも失敗、 自動車事業にも展望があるとはいえない。 そう考えると、 IWAKURAが、大企業の下請けから脱却するのは、 方向性としては間違っていないのだと思う。 ◇ ただし、中小企業の連携のなかでなら、 IWAKURAが飛行機やロケットの事業にかかわる可能性は、 十分にありうるだろうし、 テレビドラマとしても、最後に舞い上がらないはずはない。 なので、わたしは、 いまだに舞が宇宙へ飛ぶだろうと思ってます(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.20 17:33:49
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