大阪サンダーバード計画 ---現行地域防災計画(原子力災害対策)の改定を求める---
大阪サンダーバード計画(消防と自衛隊のコラボによる)---現行地域防災計画(原子力災害対策)の改定を求める--- 元神戸市消防司令補 藤原潤一郎第1章 現行防災計画を批判する1 現在の原子力防災計画は机上の空論。防災の実務を事実上民間である電力会社という一民間企業に丸投げした状況にある。それゆえ、地元住民や地元自治体から見て、いわばブラックボックス化した、手出しできない聖域化しているという欠点がある。 福島原発事故ではだれが事故対策の実務を執るのか、現場指揮権はどこの誰なのか、最後まで明確化されなかった。 防災計画では福島県のオフサイトセンターで県の責任者が指揮することになっていたが、停電でオフサイトセンターが機能しなかった。2 原発事故も消防法の適用範囲 消防部隊の活動の根拠法である消防法において、その適用範囲は「水火災その他災害への対応」であって、原子力災害を除外する条文はない。 原子力関連法についても消防部隊の関与を妨げる条文は、見当たらない。 にもかかわらず、地元消防本部は消防法に基づく活動の前面に出ることはなかった。防災の実力部隊である地元消防本部は、住民の避難にあたるという任務を防災計画に割り当てられているため、現場での活動の指揮権をはく奪されたも同然の状況にあったためである。 筆者の現役時代、管内の危険施設には何度も査察を行い、事業所の自衛消防隊との協議を重ね、すべて防御計画を作成し、必要な訓練を繰り返してきた。神戸でも大学や病院、工場などに放射性物資が存在することから、放射防護服などの装備をした上での訓練を実施している。 神戸市民の生命財産を守るのは消防の責任との認識が浸透しているからだ。 原発事故の際は、住民の避難誘導は役場の一般職員に任せ、消防本部は現場で指揮をとるべきである。応援隊である東京消防庁や他都市の消防隊を有効に活用できるのは、原発を管轄として防御計画を作成し、現場を熟知する地元消防であるはずだからだ。 自衛隊や警察など他の組織では、その本来の目的からも任務を全うできるはずがない。国も最終的な責任はとれるが防災戦力は有していない。3 東京消防庁の活躍 福島原発事故での東京消防庁の活躍は目覚ましいものがある。しかも先着したのに現場待機させられていた。その間、3号機の1500トン使用済み核燃料プールに対し、テレビでおなじみの自衛隊ヘリによる放水量は50トン、その後の自衛隊消防車は30トン、翌日に自衛隊は40トン、米軍の高圧放水車が2トンと政府によるセレモニーが終わった後で、いよいよ消防隊の出番になった。解禁となった東京消防庁の放水車(スーパーポンパー)は毎分3トンの水を放水し始め、大阪消防局の後方支援を得て合計2430トンの送水作業を行った。放水開始とともに3号機周辺での放射能濃度がみるみる下がり始め、活動できるレベルまで低下したことにより、東京消防庁の冨岡豊彦隊長は目標に命中していることを確信したという。(福島原発事故:東京消防庁・ハイパーレスキュー隊記者会見 2011年3月19日)4 地元消防本部の制約と安全神話の弊害 福島の事故での地元消防本部は防災計画の内容を忠実に守っただけかもしれない。また地方の小規模消防であるからということもあったかもしれない。 しかし電源三法による巨額の財政補助があり、原発災害対応のための十分な消防予算もあったはずである。 平時は霞が関や研究者などデスクワーカーに任せておけばよい。 しかし、いざ事が起こった非常時の際は災害対策基本法や消防法を根拠として市町村長および実行部隊を率いる消防本部長が、陣頭に出るべきである。 もちろん十分な原発事故対応装備の予算請求と隊員の訓練など準備を万全にした上であることは言うまでもない。 原子力施設の安全神話は、消防の関与は必要ないとの間違った認識を、各級政治家および関係者の頭の中に持たせてしまったのである。 5 イソコンを撤去した自民党政権(小泉内閣)とNHKの責任 炉心冷却のための非常用復水器(イソコン)は全電源喪失でも動作するはずであるが、電力会社のミスで開閉弁を閉じてしまっていたことはNHKでも放映されたため、周知のとおりであるが、2号機以降はイソコンそのものが撤去されていたことはご存じだろうか? 当然、NHKは福島原発事故の原因究明のための続編の番組を放映してくれるものと期待していたのだが、なぜか撤去されていたことはほとんど知られていない。 電力会社の面々も撤去されているとの認識があり、開閉弁の確認もおろそかになったことが想像される。 NHKは時の政権の顔色をうかがうことなく、事故の原因究明を続けるべきで結果を国民に知らせる義務がある。 今のままでは、第二第三の原発事故の防止はできない。第2章 原発対応消防隊・サンダーバードの創設1 東京消防庁につづき、大阪にも原子力事故対応消防隊を常備する。福井県敦賀や西日本の原子力発電所での事故に際し、事業所の自衛消防隊などの民間人の活動に任せるのではなく、防災のエキスパートである消防機関が、消防法に基づき現場活動の第一線に立って、国民の生命財産を防護するべく、人命救助を最優先とし、かつ被害の拡大を防止できる装備と能力を有した特別消防隊を大阪に設置するものである。 装備は東京消防庁を参考にすればよい。2 現行国際救助隊の限界 海外で大規模災害があれば、東京および政令指定都市消防本部からの援助隊が被災国に派遣されることになっているが、輸送手段の関係で、人員と軽装備に限られていた。 本来なら前述の大型消防車両を同時に現地に投入できれば、効果的な活動ができるのは言うまでもない。3 自衛隊大型輸送機川崎重工XC-2を利用し緊急派遣隊を構成する本計画の特徴であるが、自衛隊の輸送機XC-2は大型消防車をそっくり輸送できる能力がある。設計の川崎重工によると民間にも転用できるようYCXを開発したというが、貨物室寸法が4m×4m×16mであり、前期のスーパーポンパー8,480(L)x2,490(W)x3,600(M)とホース延長車7,440(L)x2,490(W)x3,500(M)の1セット(総重量32トン)を分解することなくそのままに空輸できる。東京と大阪で、同機を運用すれば、国内の原発事故はおろか海外の大規模災害にも即応できる広域国際消防戦力が誕生することとなる。当面は自衛隊を利用するが、将来的には民間のYCXを利用して、チャーターする方法となろう。遠距離の国際派遣は外務省負担、国内は近距離なので予算的にも災害対策費用で賄えよう。