カテゴリ:書評
『月3万円ビジネス』というタイトルだけ読めば、陳腐な感じしか受けませんが、本書『月3万円ビジネス』は、新しい地域社会のあり方、人の生き方を提示している、社会改革の本であるといえます。
カタチとしては、月3万円では生きていけないので、月3万円ビジネスを5個やれば15万円、10個やれば30万円になるので、住居費などが安くすむ地方では生きていけるでしょうということです。 長いこと、自分でビジネスをしている私からすると、月30万円稼ぐのなら、30万円の仕事1個のほうがよいのですが、30万という金額の仕事になると手間や時間がかかることが多いので、実際は10万円の仕事を3つやるほうが効率的にはよくなる傾向になります。 逆に、3万円の仕事というのは、手間がかかる割に身入りが悪く、月に10個もこなさないといけないので、割のよくない仕事ということになります。ビジネスでは効率をよくしていかないといけませんが、個人で仕事をしていても、当然それはいえていて、月3万円にこだわるなら、それなりのしくみを構築しないといけないといえます。 本書の月3万円ビジネスの1つめのポイントは、月3万円以上になったら、ほかの人にその仕事を譲りましょうということにあります。譲らなくてもいいわけではなく、譲らないといけないそうです。それを「分かち合い」といっています。 普通の仕事の考え方であれば、3万円になったら、5万、10万、20万、30万にしていかないといけませんが、自分の取り分を増やすのではなく、人に譲るのです。 それによって、他人の仕事が増えます。これは、ほかの人の月3万円ビジネスが自分に譲られることを意味します。こうして、仲間同士で仕事を分けあい、地域の仕事が増えていくのです。これを本書では「分かち合い」ビジネスと言っています。 2つめのポイントは、月3万円という小さな仕事であっても、ほかの月3万円ビジネスと組み合わせることで成立するということです。だから、本来なら成り立たないビジネスでも、仕事としてやっていけるということになります。 1つだけの仕事が5万、10万になっていかなければ、本来なら廃業になってしまいますが、そういうことがないということです。 というように、本書の月3万円「分かち合い」ビジネスは、信頼できる仲間が増え、地域での仕事が増えていくという、社会のあり方、人の生き方を変えるものとして提示されているのです。 基本は、支出を抑えれば、収入は少なくてすみます。だから、非電化製品を活用したり、家をだれでも安く持てるように、仲間で共同で作るなども提案しています。 月3万円ビジネスの実際のやり方も、アイデア段階のものもあるようですが、いろいろ紹介されています。 本書の趣旨は以上のようなものですが、それは、現代社会が直面している、グローバル、競争、奪い合いといった価値観に対して、本書は、ローカル、仲間、分かち合いといった価値観を提示するものです。 人口が減少傾向になり、経済活動が停滞する中、個々人ががんばるというだけでは、乗り切れないところまで来ています。そのとき、今のように個人ではなく、仲間とやっていく、地域でやっていくという発想は、当然志向されてもよいでしょう。 ただ、スマホに代表されるような人のパーソナル化はますます進んでいますし、共有より所有といった、私有や自我にこだわる人間の本質は、「分かち合い」ビジネスとは素直にリンクしないでしょう。 「分かち合い」は一部の人に受け入れられる価値観ではありますが、大勢にはなりにくく、さらに浸透させるには、大きなきっかけが必要かもしれません。 ともあれ、現代、さまざま局面でほころびが生じている中、新たな価値観、生き方、働き方を提示する本書は、一読しておきたい本になっています。 ★5つ ★★★★★
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最終更新日
2014.09.16 07:58:12
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