カテゴリ:書評
ヒトをヒトたらしめたものとして、歴史の教科書では、言葉、火、道具などが挙げられていましたが、本書では、料理に着眼してヒトの進化を説明しています。
簡単にまとめると、以下のような要旨になるでしょう。 ・生食では、十分なエネルギーを得ることができない(生食主義者は痩せている)。 ・料理したものは、生のものより消化しやすい(それは、ヒトだけに限らず、豚、牛、羊などでも同様だし、それらの動物も料理したものを与えると早く育つ)。 ・消化しやすいということは、消化という重労働を軽減し、エネルギーの節約になる(もし、大型類人猿と同じように食物を生で食べると、ヒトは1日5時間あまりを咀嚼していることになる)。 ・エネルギーを咀嚼に費やさなくてもよくなったので、女性は食料の採集と料理に、男性は生産的あるいは非生産的な労働に取り組むことができるようになった。つまり、料理した食物に頼ることで、性別による分業が起こり、男女間において協力の機会が生まれた。 ・料理には時間がかかるし、腹をすかせた男性が料理を盗もうとする危険性があれば、男女がペアを組めば問題は解決する。料理は、簡単な結婚制度を生み出した。 ・類人猿と比較して、人体の特徴は口が小さく消化器官も効率的にできていて、料理されたものを効率よくエネルギーとして取り込めるようになっている。その効率的なエネルギー供給システムにより、脳は大きくなった。 学術的にも今まであまり着目されていなかった料理したものを食べるということの意味や意義を、ほとんど仮説レベルとはいえ、歴史的、生物的、文化的に深くいろいろ探っていきながらヒトの本質せまる、興味深い本になっています。 ★5つ ★★★★★
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最終更新日
2014.10.01 07:59:35
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