恥辱プレイ
自分で言うのもなんだが、意志が弱いことについては折り紙付き。とりわけ食欲・睡眠欲といった本能が誘うものには、まったく抗えない。従ってダイエットに成功したことがない。こんな自分が、食欲に関して調整できるのが唯一、妊娠中である。7ヶ月の現在、いや、太ってますよ。順調に。でも妊娠中に太りすぎていいことはないと、初産の時にいちおう学習したので何かを口にするとき、普段よりはブレーキがかかるのである。普段なら太って困るのは自分だけだが、なんせ今は一心同体の身なので、子どもに悪影響を及ぼす可能性がある。それは子どもに申し訳ない。それともうひとつ大きな要因が、定期検診のたびに、他人の前で体重計に乗らなくてはいけないということである。普通、ある程度の年齢になった女性ならば、自分の体重について明かすことはしない。また、彼女の友人もあえてズバリの数字は問いつめない。それが、赤の他人の前で毎回明らかにされるのである。これは相当の恥辱プレイである。おまけに増えすぎると母子手帳に赤をつけられる。母子手帳は、母親なら大概は大事に保存しておく。結婚する前の日に娘に万感の思いをこめてそっと渡したりする。そんなお涙グッズに、増えすぎた母の体重がばっちり記され、しかも先生に注意されているメモが残されていたら。頭に浮かぶそんな光景をうち消しつつ、手にしたせんべいをそっと箱に戻す。私の人生ではあまりない事態が、毎日繰り広げられている。