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Maryam's HP 日記

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2014年09月02日
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カテゴリ:おとぎ話 ”春”




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おとぎ話”春”<1>は こちら からどうぞ




春<21>



診察を終えた晋吉は、再び庭を通って径へでた。

陽は傾いていたが、夕刻というにはまだ間がある時刻であった。


庄助のところを退出しホッとしたのか、来た時よりも彼の足取りは軽く、

道端に咲いている、黄色や紫の小さな野花を目にして、

色鮮やかに可憐な姿よ っと感じ入る、心の余裕まで持ち合わせていたのだった。


晋吉が、庄助の呉服屋が面する大通りへ出ると、

春の陽気のせいか行き来する人は多く、

人々が閑談する姿や、笑い声などが晋吉の耳に聞こえてきたのだった。

そのまま彼は、大通りをまっすぐ歩き進んで行くと、

遠目に、女・子供が、ガヤガヤと集い、賑やかにしているのが見えてきたのだった。



一体あそこで何が起こっているのだろう・・・っと晋吉が注意を傾けみてみると、

体格の良い中年女が、大きな声で、路傍で店を広げている行商男相手に、

品物を値切っているところであった。


中年女も、行商男もこういう場面はお手の物、経験に経験を重ねてきた、

っといった口調で、周囲のものを笑わせ楽しませながら、値段の交渉をしているのであった。

実際・・・この中年女の退屈な日常においては、品を買うことよりも、

品を値切り、人々を笑わせる事の方が、はるかに大きな楽しみであったのだろう。



晋吉は、行商の品に興味があるわけでもなく、

また売買の口上に興味を惹かれるわけでもなかったので、

サッサっと人目につかぬように、足早にそこを立ち去るつもりでいたのだが、

その人集りの中に、思いもかけず彼は、春 の姿を見つけたのだった。


晋吉が遠目からみても、あれは紛れもなく春である っと、

はっきりわかる程に、周囲の女・子供の中でも飛び抜けて、

白い顔と腕をしており、春は相変わらず細い、小さな肩をしていた。


そして、おそらく母親の形見であろうと思われる、古びた地味な色・柄の着物を着て、

中年女と行商男のやりとりを聞きながら笑って、そこに佇んでいたのだった。



・・・すると、脳が命じたわけでもなかったのだが、晋吉の脚は自然と歩を緩め、

人集りを遠巻きに眺めている人々に混じって、立ち止まったのだった。








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Last updated  2014年09月03日 04時09分10秒
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