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カテゴリ:予習シリーズ
予習シリーズ6年下第十回は「物語・小説のまとめ」です。
テキストは宮本輝「泥の河」 名作です。 ここで出てくるのは二人の男の子。 小説を読むときに注意するのは、登場人物の感情に関する表現。 「感情表現」をチェックすることが、小説読解の第一歩です。 読んでいて、登場人物の感情をあらわしている言葉があったら、とりあえず線をひいておく。 とくに抑えるところは、「会話とその前後」「登場人物の仕草」「景色・色に関する情景描写」など。 感情に関する表現があったら、←(・_・┐)))チェック(((┌・_・)→ あとは、場面わけ。 場面わけの問題があるので、時間や場所の変化にも注意しながら、本文を読んでいきます。 読む前に、読みながら、登場人物の背景を想像することも大事。 読んでいると、なんとなく昔の話だなぁ、くらいはわかる。 信雄のほうが喜一よりも年上かな、くらいもわかる。 それだけわかったら充分です。 (この小説の実際の設定は昭和30年代、信雄と喜一は同い年の9歳です) ◎ まず、はじめの場面。 信雄と喜一が祭りにやってきた場面。 ふたりとも、祭りの雰囲気に興奮してうかれてます。 1行目 「初めてや」 → 初めてお金持つ喜一 2行目 「そのたびに掌を開いて」 → 不安、確認、ワクワク 5行目 「僕のんと合わしたら、何でも買えるで」 → 二人で祭り、二人のお金、嬉しい 7行目 「信雄も喜一も、火薬を詰めて飛ばすロケットのおもちゃが欲しかった」 → ロケット欲しい 14行目 「祭り気分にうかれていった」 → うかれてる と、感情表現にチェックいれながら本文を読んでゆく。 ふたりが祭りのにぎやかな雰囲気にうかれていることがわかればいい。 小説の線引きのコツについては http://d.hatena.ne.jp/masu2/20050624 あたりを参考にしてください。 それから、水飴屋の前で喜一が水飴を買おうというのですが、信雄はロケットを買ってからにしようと言います。 しかし焼きイカ屋の前でも喜一は同じことを言う。 このあたり、かなり大事。 >> 飲み物や食べ物を売る店の前に来ると、喜一は必ず信雄の肘を引っぱって誘うのだった。 「きっちゃん、ロケット欲しいことないんか?」 喜一の手を振りほどくと信雄は怒ったように言った。 「ロケットも欲しいけど、僕、いろんなもの食べてみたいわ」 口をとがらせて、喜一は脛の虫さされのあとを強く掻きむしった。 << 喜一は、はじめ信雄と一緒にロケットを欲しいと思っていたのが、 祭りにやって来ていろいろ見ているうちに目移りして、食べ物に目がいってしまう。 水飴とか焼きイカとか、ふだんは食べられないようなものがたくさんあって、 それを食べたいという欲望に、ロケットが負けてしまっているわけです。 しかし、信雄はロケットが欲しくて、喜一のそんな気持ちは受け付けない。 この、ふたりの気持ちがすれちがっていくところ、感情の温度差が、あとから意味を持ってきます。 あと、押さえるべきは「僕のんと合わしたら、何でも買えるで」のセリフ。 お金は二人が出し合っていて、二人のお金を合わしたらってところが大事。 喜一からしたら、「僕のお金でもあんねんから、僕かて言わしてもらうで」くらいの気持ちはあります。 チェック。 ◎ 次の場面、信雄と喜一がはぐれる場面。 >> すねたふりをして一歩も動こうとしない喜一を尻目に、信雄はひとり境内に向かって歩き出した。歩き始めると、人波に押されて立ち停まることもできなくなってしまった。喜一の顔が遠ざかり見えなくなった。 << 喜一とはぐれた信雄が必死で喜一を探し出すと、何やら泣きながらわめいている喜一を発見します。 「お金あらへん。お金、落とした」 あちゃー。 あれを買おう、これを買おうと楽しみにしていたのに、お金を落としてしまった。 それも、信雄の分もあずかっていたので、二人分のすべてのお金を落としてしまった。 この段階で、喜一としたら「やってもうた」って感じです。 さっきまで「ロケットも欲しいけど、いろんなもの食べてみたいわ」なんて文句言ってたのに、 今では何も文句言える立場ではありません。 もうひたすらゴメンナサイです。 ◎ 三つ目の場面、ロケット屋の場面 お金をなくしてとぼとぼと、石段に座り込む二人の前にロケットが落ちてきます。 ロケット屋のおっさんがおもちゃのロケットを飛ばして子供たちの気をひいています。 そのロケットのひとつがふたりの前に落ちてきた。 「危ないぞォ、月まで飛んでいくロケットじゃぁ」と叫びながらロケットを飛ばしてみせるおっさんの姿を笑いながら見ていた信雄はしかし、「なぜかあらぬ方に視線を注いでいる喜一の目が、細くすぼんでいる」のを見ます。 「のぶちゃん、帰ろ」 喜一が信雄の肩をつつき、 「早よ行こ、早よ行こ」 喜一は笑いながら、信雄をせかしてロケットのおっさんのもとを離れます。 ◎ 四つ目の場面、二人の争い 人混みから離れて、喜一は服の中に隠し持ったロケットを信雄に見せます。 さっきおっさんが店を離れたすきにロケットを盗んでいたのです。 >> 人混みを避けて路地の奥に駈け入ると、喜一は服をたくしあげた。おもちゃのロケットがズボンと体の間に挟み込まれていた。 「それ、どないしたん?」 「おっさんがロケット拾いに行きよった時、盗ったんや。これ、のぶちゃんにやるわ」 信雄は驚いて喜一の傍から離れた。 「盗ったん?」 得意そうに頷いている喜一に向かって、信雄は思わず叫んだ。 「そんなんいらん。そんなことするのん、泥棒や」 信雄の顔を、喜一は不思議そうに覗き込んだ。 「いらんのん?」 「いらん」 口汚く怒鳴っていた香具師から、まんまとロケットを盗んできたことは、信雄にも少し痛快なことであった。だが、彼は心とはまったく裏腹な言葉で喜一をなじっていた。喜一の手からロケットを奪い、足下に投げつけた。そして小走りで人混みの中にわけいっていた。喜一はロケットを拾い、追いすがってきて、また言った。 「ほんまにいらんのん?」 自分でもはっとする程はげしい言葉が、信雄の口をついてでた。 「泥棒、泥棒、泥棒」 人波をかきわけかきわけ、信雄はむきになって歩いた。喜一の悲痛な声が後ろで聞こえた。 「ごめんな、ごめんな。もう盗んだりせえへん。のぶちゃん、僕もうこれから絶対物盗ったりせえへん。そやから、そんなこと言わんとってな。もうそんなこと言わんとってな」 振り払っても振り払っても、喜一は泣きながら信雄にまとわりついて離れなかった。二人は縺れ合いながら、少しずつ祭りの賑わいから離れていった。 << 107行目 「得意そうに」 109行目 「不思議そうに」 などから、喜一が盗みを働いたことについて罪の意識を感じていないことがわかります。 そして、「いらんのん?」「ほんまにいらんのん?」と繰り返しているところから、喜一がロケットを盗んだのは何のためかがわかるでしょう。 ロケットよりも水飴や焼きイカが食べたかった喜一は、お金をなくしたことから信雄に対して済まないという気持ちがあったのです。だから、信雄が欲しがっていたロケットを盗んで信雄にやることで、信雄から許してもらいたかったのです。 信雄という友人をなくしたくない気持ちから、信雄が喜ぶと思ってロケットを盗んだのです。 そして信雄は、そんな喜一の気持ちがわかってしまったからこそ、必要以上に喜一を「泥棒、泥棒」と激しくなじってしまったのです。 喜一の盗みを責めながら、自分の中にも喜一と同じような心があることをおそれ、だから信雄は喜一をますますきつく責めてしまうのです。 問9 傍線部8「彼は心とはまったく裏腹な言葉で喜一をなじっていた」とありますが、この時の信雄の気持ちを「心」「裏腹な言葉」の具体的な内容にもふれながら、説明しなさい。 まず、文字数を確認します。 この問題は文字数指定がありませんが、回答欄からしたら五行分くらいのスペース。 だいたい、80字くらいでしょうか。 次に、解答の形を考えます。 「心」と「裏腹な言葉」について書く。 問題文の形は「信雄の気持ちを説明しなさい」なので、答えの形は「~~気持ち」となる。 それを前提にして考えると、 「本当の心は~~だが、言葉は~~で、~~な気持ち」 という形になります。 また、具体的に、とあるので、具体的にかかなくてはなりません。 「心」→ どんな心かと言うと、「心とは裏腹に喜一をなじる」んだから、「なじる方向とは反対の心」つまり「喜一の盗みに賛成、認める心」 傍線部のすぐ前に、「信雄にも少し痛快なことであった」とあるので、これをつかう。 「裏腹な言葉」→ これはもうずばり「泥棒」ですね。 全体の形は、 「心は」 少し痛快 「だが」 しかし 「言葉は」 泥棒となじる 気持ち。 で、17字。 これは、解答になくてはならない要素です。 でもこれでは文字数がぜんぜん足りませんので、いろいろと説明を足していきます。 喜一がロケットを盗んだことを少し痛快に思う 21字 しかし、 4字 喜一のことを泥棒と激しくなじって 16字 責めてしまう気持ち。 10字 で、50字くらい。 あとは、これにさらに詳しい説明を足して、文字数整えたら終わりです。 問10 傍線部9「喜一は信雄にまとわりついて離れなかった」とありますが、この時の喜一の気持ちを、盗みをはたらいた理由にもふれながら、百六十字以内で説明しなさい。 まず、問題文から解答の形を考えます。 喜一の気持ちを盗みをはたらいた理由にもふれながら説明しなさい、なので、 そのような文の構成にします。 コツとしては、短い文をつくって、それをふくらましていくと、無理なくできます。 「喜一は(3字)(盗みをはたらいた理由)からロケットを盗んだが、(12字)(その結果)ので、(3字)(喜一の気持ち)な気持ち。(5字)」 という文の作りになる。 その上で、各パーツをふくらましていきます。 (盗みをはたらいた理由) お金を落としてしまった(11字)、信雄に喜んで欲しかった(11字)、二人で祭りを楽しみたい(11字) (その結果) 信雄が怒った(6字)、泥棒と言われた(7字) (喜一の気持ち) 悲しい(3字)、信雄に許して欲しい(9字) こんなところでしょうか。 今のところ、パーツを並べて、それをぜんぶ数えても80字程度にしかなりません。 でも、解答に必要な要素はほとんどこれで出てしまっています。 あとは、これをつなぎあわせて、160字にまで引き延ばしていく。 たとえば、「信雄に喜んで欲しかった」→「ロケットを欲しがっていた信雄が喜ぶと思って」 「信雄が怒った」→「喜ぶどころか信雄が怒り出したので」 「信雄に許して欲しい」→「信雄になんとしても許して欲しい」 といったように、セコセコと説明を加えていって、合計文字数が160字になる目途が立ったら、回答欄に書き込んでいきましょう。 以上、小説については登場人物の気持ちの変化について注意しながら、読んでいきましょう。 二人の人物がいれば、それがくっつくか離れるかするのが小説です。 そういった変化をとらえて、読む。 記述については、たとえ160字とかでも、まず短文をつくって、それをふくらませていく形で長い文にしていくようにしましょう。 大変だけど、~~~ヾ(〃^∇^)o !ファイトォー!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005/11/28 12:44:24 PM
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