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テーマ:お勧めの本(7401)
カテゴリ:読書
こうの史代「夕凪の街桜の国」 昭和30年、灼熱の閃光が放たれた時から10年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の小さな魂が大きく揺れる。最もか弱き者たちにとって、戦争とは何だったのか……、原爆とは何だったのか……。漫画アクション掲載時に大反響を呼んだ気鋭、こうの史代が描く渾身の問題作。 おすすめです。 絶対のおすすめ。 「お前読んでる本いつもいつもおすすめしてんじゃないかよ」、と言われましたが、バカいってんじゃないぜ松本裕。 おすすめの陰には何十冊のダメ本があるのです。 と言ったら、「でもお前マンガばっかり読んでるのか?」と言われました。 そういうわけではないんだが、マンガの方に名作が多いんだから、仕方ない。 活字のものもおすすめしたいと思っているんだけど、こっちの方はヒットに巡り会わないのです。 さて、「夕凪の街 桜の国」 これは一生モンの作品ではないかと思う。 戦争もの、原爆ものというと声高に反対を叫んだり、感情的に悲惨を訴えたり、グロな描写で肝を抜いたり、ドロドロした怒りを叫んだり、読むと精神的につらくなり、疲れてしまうものがほとんどであり(それは性質上当然なのですが)、この作品はそういったものとは違っている。 この人は、うまいのです。 たいした物語の展開があるわけでもなく、ショッキングなシーンがあるわけでもなく、オチもクスグリもなく、100ページで800円はへたな同人誌より高いのです。 それでも、いっぺん読んだあともう一回読もうと思った。さらに、何度も読もうと思った。それは、この作品が表現としてすぐれているからだ。 マンガという表現ならではのすばらしさがある。 人物の目線でや、空白、コマ割り、線の強弱など、マンガの持っている武器を存分につかって表現している。絵もうまいけど、それ以上にマンガのうまい人だと思った。 マンガでしかできないやり方で、悲惨になりすぎることなくユーモラスに物語は描かれている。 伝えたいことは、ことばにはできないようなことで、ことばにしてしまったら逃げていってしまうような、あやういものだ。 それを、静かに、あくまでも静かに語る。 読んでのち、グラグラ沸騰する激しい怒りではなく、沈殿物のように自分の心の底に怒りが存在することに気付く。 いや、怒りではないな。 しょぼーんとした感情。 しょんぼり悲しくて、 悲しいんだけど、心があたたまって、 灯りがともるような物語。 本の帯には、こう書いてあった。 「読後、まだ名前のついていない感情が、あなたの心の深い所を突き刺します。」 泣くために読む本ではない、考えるために読む本だと思った。 戦争について、広島について、人生について、幸福について。 考えて、生きるための本なのだろう。 ゼヒ。 嬉しい? 原爆を落とした人はわたしを見て 「やった!またひとり殺した」 ってちゃんと思うてくれとる? ひどいなぁ… わたしは死なずに済んだ人やと思ってたのに 第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞する。 その他にも、朝日新聞で2週にわたって絶賛され、月刊誌ダ・ヴィンチで編集者総出で勧める「絶対はずさないプラチナ本」として掲載、フリースタイル刊「このマンガを読め!2005」で第3位になるなど、各方面から絶賛され、著者にとって最大のヒット作となっている。海外でも高い評価を得ており、韓国で翻訳版が出版され、米国、ドイツ、フランス、台湾でも出版が検討されている。映画化の予定あり。 夕凪の街は、1955年(昭和30年)の広島市の基町にあった原爆スラム("夕凪の街")を舞台にして、被爆して生き延びた女性の10年後の心の移ろう姿を描く。 桜の国は、第一部と第二部に分かれている。主人公は被爆二世の女性。第一部は1987年(昭和62年)の春、舞台は東京都中野区および当時の田無市。第二部は2004年(平成16年)の夏、舞台は西東京市および広島市など。 夕凪の街、桜の国の第一部と第二部、すべて合わせても120ページ弱しかないこの三つの話を順序通りに読み通して、初めて三世代にわたる家族の物語がつながるという巧みな構成になっている。両作とも、主人公に思い出したくない記憶があり、それがふとしたきっかけで蘇ることも、その記憶の内容は違うとはいえ、後々まで後遺症の残る原爆の恐ろしさと悲しさを伝えてくれる。 とはいえ、単行本の表紙の絵の通り、絵のタッチは生々しくはなくむしろ穏やかである(原爆当日の描写はわずか数ページしかない)。何気ない生活の描写に、他の作品にも共通するこうの史代の最大の魅力がある。 (夕凪の街 桜の国 - Wikipedia) << お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/06/16 02:49:46 AM
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