正解はこちら(命びろい)
私はイナゴの伊那子去年の秋、気が付いたらとても寒くなっていて「もうこれで私もおしまいなのね」と思ったの。ところが ふと見ると、なんと!目の前に暖かそうなお家があるじゃない。しかも柑橘系の香りがする大木が4本も。私は稲が好物だけど、ちょっと飽きちゃったからちょうどいいかも。どれどれ、ちょっと茎をかじってみたら、ふむふむ…なかなかいけるじゃないの。これで春までの食糧は心配ないわね。夜は気温が下がって寒かったけど、このお家には暖かい敷きわらのベッドがあって私はすっぽりもぐって眠ったの。とても心地よくって、ぐっすり眠れたわ。太陽が昇るとお日様がビニールのお家に燦々とさして、まるで春のよう。のどが渇いたなぁ~って思っていたら、都合良く雨が降ってきたわ。だけど、変な雨。上から降らずに地面だけ濡れるのよ。ガリバーみたいな、とてつもなく大きな人影が 辺りをうろうろしているわ。私は恐くなって身をひそめたの。私って保護色だからベッドの色と同じなの。だから目立たないでしょ?何日かたつうちに、だんだん このガリバーさんは恐くない人だという事がわかってきたわ。時々、私が迷子になっていないか、お家のビニールを開けては探しているの。私を見つけると安心して またきっちりと風が入らないように戸締まりをしてくれたわ。ああ、よかった。佃煮にされるんじゃないかと当初はハラハラしたわ。もう、随分暖かくなったから、私はまた旅に出なくっちゃ。気温が上がっても、私のためにビニールを外すのをためらっていた、私の「お母さん」とも呼べるガリバーさん、心からありがとう本当ならば昨年寒くなった時点で私の命は終わるはずだったの。頂いた命、大切にするわ。挨拶もしないで出ていく私を、お母さん どうか許してね。以上、イナゴの伊那子のひとりごとでした。正解は「いなご」