テーマ:時計NEWS(281)
カテゴリ:TAG Heuer
先日(といっても昨年の話ですが)ご紹介したタグ・ホイヤーの自社開発クロノグラフムーブメント「Cal.1887」の追加情報です。(ほぼCHRONOSの受け売りですがご容赦を^^;)
実はこのムーブメントは1998年にセイコーが発表した6S系がベースになっているのだそうです。ここで言うベースと言うのは設計段階で、という意味で、セイコーからベースムーブメントとして購入している訳ではありません。正確にはセイコーインスツル(SII)と6S系ムーブメントの特許を含む知的財産の使用に関する契約を締結し、タグ・ホイヤーが独自に開発した。ということです。 なるほどコラムホール作動、スイングピニオンクラッチ、マジックレバーによる両方向巻上げ機構など、主だった機構が同じわけですね。但しSIIから購入しているのはピン、ネジ、レバー類とごく一部のみで、残りはスイス国内で生産されており、当然と言えば当然ですがこのムーブメントが「SWISS MADE」と定義されることに疑いの余地はありません。 6S系ムーブメントの優れた特徴は「CHRONOS」27号を読んで頂くとして(^^;)、スイスの名門ブランドである「TAG Heuer」が、今後の戦略上非常に重要になるであろう自社開発クロノグラフムーブメントを、あろうことか「日本製ムーブメント」をベースに設計したという事実は非常に興味深いです。 スイスブランドにとって「SWISS MADE」つまりスイス製であることは、我々日本人には想像できないくらい重要な、死守すべき砦のようなものです。多くのブランドが「スイス製以外のムーブメントは、どんなに優れていようと使うことは考えていない」と公言しているように、スイス時計産業の生命線といっても過言ではないと考えているのでしょう。そして多くの愛好家もまた「SWISS MADE」に価値を見出しています。 近年「SWISS MADE」の定義は緩和されつつあり、その定義の存在価値が低下しているのを危惧する声も多くあるようです。各ブランドは「SWISS MADE」の価値を維持することに苦慮しているようです。 もちろんCal.1887も「SWISS MADE」であることは間違いありませんが、一方で基本設計が「JAPAN MADE」であるという事実もあります。 近年の日本製とりわけグランドセイコーにおいては、スプリングドライブに象徴される技術力や、装飾品としての作り込みなど世界的に高い評価を得るに至っていることは確かです。が、やはり高級機械式時計というカテゴリーにおいてはまだまだ遅れているという認識があり、機械式時計市場では「日本製」そのものの評価が高いとは言えない状況です。 日本のセイコーのDNAを強く引き継いだ「SWISS MADE」のCal.1887が、果たして世界的に受け入れられるのか、スイスの時計業界はどのように受け止めるのか、日本人として少々複雑な気持ちですが、興味深く見守りたいと思います。 タグ・ホイヤーの時計を探す お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.02.11 19:28:22
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