【腕時計:ゼニス】これぞ10振動のエル・プリメロ!の新作クロノグラフ
ゼニスは自社のマニュファクチュールムーブメント「エル・プリメロ」に新たな機能を与えました。 文字盤外周に刻まれた10までの数字。これが意味するところ、そう、センターの秒積算計が1周10秒の積算計なんです。10秒積算計の目盛りは1秒の間に10目盛り刻まれ、1秒間に10振動(毎時36,000振動)のエル・プリメロによって正確に1/10秒を表示することに成功しています。 この「エル・プリメロ フロドワイヤント1/10thセコンド」は、3時位置に60秒積算計、6時位置に60分積算計という特異な積算構造を持つクロノグラフで、9時位置のスモールセコンドも含めると、3つのインダイヤルが全て「1周60」のインデックスであり、視認性(読み取り易さ)という面においてはお世辞にも優秀とは言えません(むしろ見難いって^^;)。しかしこのモデルに対してそんな評価は意味を持たないと言って良いでしょう。最大のハイライトがセンターの10秒積算計にあるのは言うまでもなく、これこそがエル・プリメロにしかできない1/10秒の可視化です。通常の6倍の角速度で運針する様はさぞ迫力があることでしょう。 タグ・ホイヤーはエル・プリメロ(Cal.36)に「ノギス」の如く機能する回転目盛りを装備することで1/10秒の可視化を試み一定の成果を上げましたが、「1/10thセコンド」とは比べるべくもないでしょう。 デザイン面では、オーソドックスでトラディショナルなデザインが採用されているのが興味深いところです。時計業界の流れがデカ圧一辺倒から変わりつつあること以上に、後述する新CEOの方針によるところが大きいようです。 また、新たなラインとして「キャプテン」シリーズが加わりました。エル・プリメロ搭載のオーソドックスな3カウンタークロノグラフと、エリート搭載の中3針モデル。50年代の機械式時計全盛期を思わせるクラシカルな意匠(現代に通用するモダンさも持ちつつ)は、なぜか妙に安心できます。クロノグラフで42mm、3針で40mmという、現代においては控えめなケースサイズも好感が持てます(個人的にはあと一回り小さくして欲しい)。更に好感が持てるのはその価格設定で、SSモデルであれば、クロノグラフが50万円台、3針に至っては30万円台です。今時ちょっと有名なブランドであればETAムーブメントでも軽く越えるようなこの価格設定は、前CEO時代には考えられませんでしたね(失礼!)。 ゼニスの新作を見て感じたのは、トップが替わったことによる変化の大きさです。2009年6月にジャン=フレデリック・デュフール氏が新CEOに就任して僅か1年足らず、奇抜なデザインと無理な価格設定からの脱却が確かなものであることを実感させてくれました。前CEO:ティエリー・ナタフ氏の舵取りを全否定することはしませんが、オープンやデファイに象徴されるエキセントリックなデザインと、以前のイメージからかけ離れた価格設定にはかなりがっかりしたと言うのが、機械式時計ファンの偽らざる気持ではないでしょうか(もちろん世界経済の変化という側面も大きかったのでしょうが)。 私もナタフ氏時代にはゼニスを「どちらかと言うと嫌い」なブランドと位置付けていましたが、今年の新作を見て考えが大きく変わりそうです。デファイに替わるスポーツラインがどうなるのか等々、これからのゼニスには注目したいと思います。ゼニス一覧へ