カテゴリ:俳句ちら読み 逍遥遊
『プレバト』(大阪MBS制作、TBS系全国ネット)5月2日放送。
「渋滞」という憂鬱な掲題で皆苦吟したようだが、中には秀逸な句も。 とろサーモン・村田秀亮 渋滞や柩の母とゐる深春 普段なら歓迎できない車の渋滞だが、亡くなった母の柩を載せた霊柩車が渋滞に巻き込まれて、母と少しでも長く一緒にいられたことが、むしろ嬉しかったという繊細な心理を詠んで、発想がユニークな秀句。 原作「渋滞の柩車に妣と春深し」も非凡であり、このままでもいいとしながらも、評者の俳人・夏井いつき氏がワンランク上の添削。 「ゐる」という動詞を加えたことで、さらに臨場感のあるリアルな(生々しい)情感が増した。 なお、原作の「妣」は、これ一文字で「亡き母」を意味し、詩的表現ではしばしば使われる。 立川志らく 桜雨走れり色の無き渋滞 原作「色も無き渋滞にふと桜雨」を添削。季語「桜雨」は、そのまま桜の花が咲く頃の雨を意味する情緒纏綿たる言葉。 一読して「ふと」が弱点であることは一目瞭然である。夏井氏によれば、2音足りない時の「ふと」、3音思いつかない時の「すこし」だという。わたくしくまんパパ坂本野原を含め、実作者がやりがちな罠の、まことに耳が痛い指摘である(苦笑)。 添削後は、「走る(色っぽい)桜雨」と「走らない(無色の)車列」の渋滞が対比された面白い表現になった。さすがである。 なお、「色も」の「も」もやや理屈っぽく散文的であり、韻文ではなるべく避けるべきであろう。ここも夏井氏がさりげなく直している。 作者ほどの手練れが、今回はちょっと雑駁だったか。 長野智子 祝日の官庁街や落椿 原作の「静寂の官庁街や落椿」を添削。 作者によれば、祝日も仕事で東京・霞が関の官庁街を歩いていたところ、いつもと違って人も車も少ない道端に、鮮やかな深紅の寒椿の花が落ちていて、はっとした。ツバキ類は、萼から花ごとぼてっと落ちるのが特徴であり、印象的である。 ちょっと類句もある(発想に既知感がある)ような気もするが、まずまずの佳句。・・・そういえば、作者の明朗な個性と美貌は、ちょっとツバキっぽいかも、なんて思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年05月15日 05時27分36秒
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