カテゴリ:愛すべき(?)トンデモ映画
主人公が自分の子ども時代を回想する形式で作られた自伝的な映画は
古今東西、数多くありますが、 新藤兼人監督の「落葉樹」ほどノスタルジックで、思い入れが強く、 それゆえ懐かしさよりも、ある種の不気味さを感じてしまう作品はないでしょう。 年老いた作家(小林桂樹)は、仕事で逗留中の旅館で、 はるか昔の少年時代を回想していた。 彼が少年時代をすごしたのは、広島の農村。 家は裕福で、姉たち、そしていつも笑顔の優しい母(乙羽信子)がそばにいた。 しかし、父(財津一郎)が、知人の借金の連帯保証人になったのがきっかけで、 幸せいっぱいだった一家に暗い翳が‥‥ 全篇モノクロームの映像が、大正時代の広島の農村の風景や、 宮島などを美しく表現していました。 いくつもの和室、重厚な屋根瓦、五右衛門風呂はもちろんのこと 手桶や柄杓といった小道具にいたるまでの、農村の素封家らしい一家のたたずまいは、見事でした。 ちょっとさびれた旅館でペンを原稿用紙に走らせる小林桂樹さんが、 あきらかに新藤監督であることは、まるわかりでした。 しかし‥‥監督のノスタルジアとマザコン度があまりにも強すぎて引いてしまうんですよ。 世の男性の多くはマザコンなんでしょうが、 この方のマザコン度はハンパじゃないなあと思わせます。 出だし、超ノスタルジックな昔風の回転木馬に、 少年とお母さんとお父さんが、不気味なほど無表情な顔で乗っているタイトルバックで、 (BGMは確か「ドナウ河のさざなみ」だったような気がします) なーんかイヤな予感がしたんですよね。 「つまらなそう」っていうんじゃなくて、「なんかトンでもなさそうな映画だ‥‥」みたいな‥‥(でも内心じゃちょっと期待したりして) その予感は、見事的中!大ノスタルジア&マザコン映画でした。 上が十代後半くらいで、末っ子(主人公の少年時代)が6,7歳の子どもの母親が 当時60を過ぎた乙羽信子サンってのが、ちょっとムリがありますね。 いくら監督の奥様で名女優とはいえ‥‥ その60過ぎた乙羽さんが、少年と風呂に入るシーンでは全裸を披露。 お歳のわりには張りの良い身体でしたが、それでも正視するには、相当なムリが必要でした。 わけがわからなかったのは、女囚さそりの梶芽衣子扮する小林桂樹さんの恋人と思しき女性。 「この人、いったい何のために出演してるの?」と、首をかしげるばかりでした。 さらには、主人公が逗留する旅館の近く(?)で、バイクに乗った青年が いきなり何の前触れもなく転倒して事故るシーンがあったのですが、 あの唐突すぎるシーンも何が言いたいのか、さっぱりわかりませんでした。 いっちばんすごかったのは、ラスト、小林さんが、亡き母を思い出すうちに、 「お、お母さあーん!」と叫んで、むせび泣くシーン。 いい歳なんてとっくに過ぎたジイサンが、「お母さあーん!」ですよ。 モイラはスクリーンを観ていて、思わず恥ずかしくなって下を向いてしまいました。 百歳に手が届こうという今も現役の新藤兼人監督ですが、 メガホンをとられた作品の中には名作も数多いけど、 「迷作」も結構ありますね。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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