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Aug 31, 2008
カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評
ビリー・ワイルダー監督は、「失われた週末」「七年目の浮気」「アパートの鍵貸します」など、
シニカルな、そして舌を巻くほど巧みな人間描写を得意とした名作の数々を世に出しましたが、 モイラが一番好きなワイルダー作品は、1950年度のこちらです！  【世界名作映画DVD】サンセット大通り ロスの売れないシナリオライターの青年ジョー（ウイリアム・ホールデン）は、 車の月賦が払えずに月賦屋の督促から逃げ回り、 たどり着いた先は、大金持ちの大邸宅が軒を並べるサンセット大通りの古びた屋敷。 屋敷の主は、かつての無声映画時代の大スター女優だったノーマ（グロリア・スワンソン）。 そして、ノーマの影のように付き添う老執事マックスがいた。 ノーマは逃げ込んでいたジョーがシナリオライターだと知るや、 自分が主演の映画「サロメ」のシナリオを、屋敷で書くように懇願した。 もう５０の坂を越している上に、ハリウッドでは完全に忘れ去られた存在なのに、 今でも自分は大スターで、娘役が演じられると思い込んでいるノーマに、 ジョーは内心あきれ返ったが、「この老女優にとり入れば、ハリウッド・デビューも夢じゃないかも‥‥」という計算が働き、 若者と老女の奇妙な同居生活が始まった。 だがジョーは、いつまでも過去の栄光に縋りついている老女の男妾のような生活に、つくづく嫌気がさすようになり‥‥ 過去の栄光に縋りつき、今の自分が全く見えない人間の醜悪さと悲劇を、 これほどまでに抉り出すように描いた作品は、そうざらにはありません。 ワイルダーの演出もさることながら、彼自身も加わっているオリジナル・シナリオが、それはすばらしい！ 出だしで「ん?!」と、観客に疑問符を投げかけ、 あの映画史に残る有名なラスト・シーンでは、観客の背筋を恐怖に震わせる‥‥ モイラは大学で映画を専攻していた時、名画座でこの作品を目にしたのですが、 エンドマークが出たあと、「お‥‥恐れ入りましたあ、ワイルダー監督！」と、 思わずスクリーンに向かって頭を下げるところでした。 忘れられないのが、リアルで無声映画時代の大女優だったスワンソンが かつての自分の主演映画をホールデンに見せながら、得意げに吐く台詞。 「台詞なんかいらないわ。私たちには顔があったの。私は顔で語れるのよ」 なるほど、サイレント時代に俳優にまず要求されたのは、確かに顔です。 顔の造りさえ良ければ、それでオーケーだったそうです。 だからトーキーの時代を迎えるや、演技や台詞が下手な俳優、声の悪い俳優は、 あっという間にスターの座からすべり落ちたのは、ハリウッドもヨーロッパも日本も同じ。 （ハリウッドでは、ロシア人ゆえ、英語がまともに話せなくて、スクリーンから去った女優もいました。） 時代の変化について行けないだけでなく、自らの敗北をも受け入れることができない人間が唯一縋りつくのは、「過去の栄光」、ただそれだけ。 「自分はまだ大女優」という狂気の如き妄想にとりつかれた老女役で、 「過去の存在」だったスワンソンは、再び脚光を浴びるのですが、 スクリーンの中のノーマは如何に‥‥？ 人間の中の棲む狂気を描いた、恐ろしい、しかし学ぶものの大変多い名作です。  【世界名作映画DVD】失われた週末  ＜ハッピー・ザ・ベスト！＞［DVDソフト］ 麗しのサブリナ  DVD 七年目の浮気 特別編 【ワールド・シネマ・コレクション 第4弾】  情婦(DVD) ◆20%OFF！ お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
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