カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
松竹ヌーベルバーグの鬼才・大島渚監督‥‥
モイラはこの人の映画、「めちゃくちゃ好き!」か、「最悪!二度と観たくない!」か、 評価が極端に分かれてしまうんですよね。 ‥‥で、この問題作は、前者なんですよ。 '66年の「白昼の通り魔」です。 神戸の山の手のお邸で、家政婦として働く長野の農村出身の娘シノ(川口小枝)のもとへ、 幼馴染の英助(佐藤慶)がいきなりやってきて、 シノを犯した上に、邸の奥さんまで犯した挙句、殺害した。 英助は、次々と女性を陵辱しては無惨に殺す、世間を騒がせていた「白昼の通り魔」だったのだ‥‥ 数年前までは、ちょいワルだけど純粋なところがあった英助が、 なぜ社会を震撼させる凶悪犯に‥‥?! その要因は、シノの郷里で起こった、ある心中事件だった‥‥ 高度経済成長真っ只中の都市部と農村との経済的・社会的格差、 農村特有の閉鎖性と、その裏腹にある性的なルーズさ、 人の心をもねじまげてしまう「愛」の残酷さ、 口では美しいフレーズを並べるインテリの、逆境に遭った時のもろさ、 そして、貧しい無学な田舎の娘の本能的なたくましさ‥‥ うわ‥‥大島ワールド全開じゃん! キャストも、小山明子、佐藤慶、戸浦六宏、小松方正、渡辺文雄(濃いなあ‥‥)といった「大島組」に加え、 殿山泰司、観世栄夫、岸輝子といった演技派がずらり。 奥さんを犯された上に惨殺される邸の主人役の観世栄夫が、混乱の果てにシノを平手打ちするシーン、とても印象に残ってます。 でも一番凄みがあったのは、通り魔役の佐藤慶と、 その恩師で妻の中学教師役の小山明子のカップル。 無学な農村のあんちゃんと、農村では名士扱いされる教員の取り合わせ。 これだけでもかなりショッキングです。 刑事役の渡辺文雄も、木で鼻くくったような感じだったけど、それがまた味わい深かったです。 全篇モノクロで、白をやたら強調した映像使いがユニークでした。 でも文句もあります。 小山明子演じる女教師が村の若者たちを集めて訓話を垂れるシーンで、 若者たちが先生の訓話そっちのけでお菓子ばかりつまむ手のカットが、無意味に長すぎ! 銀座の町で小山明子が人からタバコの火を貰って一服するシーンも、意味不明。 とにかく無意味なカットのつなぎが多すぎます。 信越線横川駅の峠の釜飯弁当も、なんであんなにアップにする必要があるかなと思いました。(モイラはあの駅弁、子ども時代は大好きでしたけどね) テーマは重く、今じゃ珍しいモノクロの上、話の展開が掴みにくく、ほとんど救いがない‥‥ それでもモイラはこの作品、大好きなんです。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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