カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
1951年、それまであまり世界的に注目されていなかった日本映画が、
この名作によって、注目を浴びるようになりました。 '51年度ヴェネチア国際映画祭でグランプリに輝いた、黒澤明監督作品・「羅生門」('50年 大映)です。 映画、ことに邦画好きの方なら、この映画のストーリーはもうご存知でしょう。 モイラごときが、ここであえて述べることもありません。 舞台は平安時代。ある男の殺人事件の真相は何ぞや‥‥?というのが、大筋のテーマですが、 人間というものの醜さ、汚さ、弱さ、みっともなさ、不正直さ、 しかし、「その中にもまだ救いがあるのだ、否、なければもはや人間とは言えない」という訴えかけが、見事でした。 若い人はほとんど観たこともないであろう、モノクロ、スタンダード作品ですが、 全く古めかしさを感じない、息もつかせぬほどの迫力ある演出‥‥ どしゃ降りの雨が客席にまでかかってくるのではないかと思われるほどの臨場感‥‥ それまで「フィルムが焼けるから」という理由で禁じ手だった、逆光を利用した撮影‥‥ 黒澤監督は羅生門のセットを組む時、門の瓦一枚一枚に、「延暦○○年」と、美術さん達に書かせたそうです。カメラでは撮影されないのに。 すごい熱の入れようですね。「ここまでやるか?!」って感じ。 完成度の高い映画を創るためには、いっさいの妥協を許さなかった黒澤明監督のこの名作は最初、 大映の永田雅一社長からは、「わけのわからん映画を創りおって‥‥」と、こきおろされたのは、あまりにも有名な話。 事実、テーマがやや哲学的なせいもあり、封切当初は興行的にもイマイチふるわなかったようですが、 超有名な国際映画祭の審査員長から、「グランプリ、アキーラ、キュロサ~ワ、ラシャモ~ン!」とグランプリ受賞を発表され、 そのニュースが日本列島をかけめぐるや、たちまち「羅生門」を上映していた映画館は、連日満員御礼。 そして永田ラッパ社長は、掌を返したようにこの作品を褒めそやし、 「ヴェネチアでグランプリがとれたのは、俺がプロデュースしたからだ。俺様の手柄よ!」と 吹聴しまくったそうです。 さすが、それから20年後、会社がつぶれるや、債権者から逃れるために慶応病院に「緊急入院」した人ですね。 原作は芥川龍之介の「藪の中」。 小説の方もなかなか読み応えがあります。芥川という作家の人間に対する鋭い洞察力に脱帽です! にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 14, 2023 07:34:49 PM
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