カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
独立プロ作品には、少なからず名作と言われるものがありますが、
'59年の大東映画製作「キクとイサム」は、まさにその代表格と言えましょう。 敗戦から十数年後の福島の片田舎。 黒人兵と日本女性の間にできた姉弟・キク(高橋エミ)とイサム(奥の山ジョージ)は、 農業を細々と営む祖母(北林谷栄)と暮らしていた。 大柄なキクは勉強は今ひとつだが、腕力では男のガキ大将をも負かすお転婆娘。 イサムもやんちゃ坊主で、姉弟はしょっちゅう喧嘩をするが、仲はとても良い。 しかし祖母の悩みは、明らかに見た目の違う混血の孫たちの将来。 そんな時、アメリカの黒人の家庭がイサムを養子に欲しがっているという話が‥‥ キク役の高橋エミも、イサム役の奥の山ジョージも、 映画出演経験は全くゼロの素人でしたが、 彼等の生き生きとした動きや台詞遣いは、子役はだしでした。 特に高橋エミが村芝居のマネをしたり、「お富さん」の歌をバックにタップを踊るシーンには、 「よくこんな子を見つけてきたもんだ!」と、目を見張りました。 エミさんは、シナリオライターの水木洋子氏が強く推したそうです。 最初に今井正監督が探してきた黒人との混血少女は、いわゆるお行儀のよい美少女で、 いかにも「肌の色でいじめられながらも健気に生きている悲劇のヒロイン」って雰囲気で、 水木さんが描いておられたイメージとかけ離れていて、全く気に入らなかったそうです。 でも次に荒川区の小学校5年生だったエミさんと会い、 彼女の太った体と怪異な顔つき、 そして彼女が半纏を着て、豆をぽりぽりかじり、祖母仕込みの東北訛を操る様子を見て、 「これだ!」と思い、即主役に起用したとか。 彼女の底抜けに明るい演技が、ともすればじめじめしたメロドラマになりがちな作品を、 おおらかで希望に溢れるテイストに仕立てたのだと思います。 おばあさん役の北林谷栄は、この時なんとまだ48歳。 映画ではどう見ても70過ぎでしたが‥‥名女優ですねえ。 今年で98歳になられるとか。 今井正監督のシビアな社会派の視点がここかしこに感じられながらも、底抜けに明るく、心温まる作品です。 真昼の暗黒(DVD) ◆20%OFF! 武士道残酷物語 / 中村錦之助 東映 純愛物語 真空地帯(DVD) ◆20%OFF! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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