カテゴリ:愛すべき(?)トンデモ映画
田中絹代、京マチ子、山本富士子、渡辺督子、山口百恵‥‥と聞いて
ピーンときた方は、かなりの邦画通と言えるでしょう。 谷崎潤一郎の名作中篇小説「春琴抄」の映画化作品の、歴代の主演女優たちです。 '34年「春琴抄 お琴と佐助」(松竹 監督‥島津保次郎 お琴‥田中絹代) '54年「春琴物語」(大映 監督‥伊藤大輔 春琴‥京マチ子) '61年「お琴と佐助」(大映 監督‥衣笠貞之助 お琴‥山本富士子) '72年「讃歌」(ATG 監督‥新藤兼人 春琴‥渡辺督子) '76年「春琴抄」(東宝=ホリプロ 監督‥西河克己 春琴‥山口百恵) 美しい盲目の琴の天才・春琴と、 彼女をひたすら崇める弟子・佐助の、師弟関係を超えた愛の物語は あまりにも有名ですが、 新藤兼人監督の「讃歌」は、他の三作品とはかなりカラーが異なっていて、 一部ではキワモノ扱いされているようですが、 モイラはこの「讃歌」が、谷崎潤一郎の原作に最も近いものであると確信しております。 原作の時代設定は幕末から明治にかけてですが、 この映画の舞台はどうも昭和初期のようです。 春琴が舞妓のような白塗りの顔に、市松人形のようなヘアスタイルなのも 他の映画化作品とは際立っています。 おまけにこの女、お嬢様育ちと、目が不自由なのを両親に不憫がられたのが災いして わがまま放題の上に、かなり性格が悪い! 父親の店の丁稚・佐助(河原崎次郎)を自分の召使のごとく独占し、 夜、密かに三味線の練習をする彼の師匠になったまでは良いものの、 少しでも覚えが悪ければ、バチでヒステリックに打ちすえるのです。 その上、琴の師匠の看板を掲げてからは、 つけ届けが少ない弟子は容赦なく破門するといった有様。 そんな暴君のような女師匠でも、佐助は女神のように崇め、 献身的な愛を捧げる‥‥というよりも、 彼女にいたぶられることを、むしろ喜んでいるのですから、見上げたものです。 まさにSMの世界なんですね。 原作に随所に記されているSM的要素をクローズアップしたのが、この作品です。 師匠と弟子といっても、生身の男と女がからむわけなんですから、当然女は時には妊娠するのですが、 生まれた子どもは皆、二人の愛の世界を邪魔するものとして、よそに養子に出されてしまいます。 はた目には非情ですが、いかに二人の性愛が濃密なものだったかを物語っていましたね。 顔が白塗りで人間の血が通っていないような春琴が、遠慮がちな佐助に愛撫を迫るシーンは、 恐ろしいまでの迫力がありました。 物語は新藤監督自身が、老人ホームで暮らす老女(乙羽信子)へのインタビュー形式で進むのですが、 この時、監督がわけのわからない「血の怪演」をしているので、 「トンデモ映画」の範疇に入れさせていただきました。 先日、参院選で民主党から立候補して、みごと落選した原田大二郎氏が、 大阪のアホなボンボン役で出演しているのに注目! にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 3, 2022 12:24:15 AM
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