【粗筋】
助けた狸の子が恩返しにやってきた。男は4円の借金を返すためにこれを札に化けさせる。狸の方ではよく分からず、4円札や1円札の4枚綴りに化けようと言う。結局5円札に化けさせた。狸の方では財布に押し込められて苦しくてたまらず、財布を食い破って逃げてきた。
「ついでにお札が5、6枚あったのをくわえてきました」
【成立】
「狸賽」「狸の鯉」に続くのが一般的だが、これで落ちとした例もある。最後に「札が札をくわえちゃいけねえ」という台詞がつくことも。
【一言】
その日は入門してすぐにやってきました。
新宿末広亭の昼の部、私の大師匠にあたる林家彦六師匠の一門会です。
まさか、師匠から一席も教えてもらわないうちに高座に上がるなんて。
出し物は、『狸さい』。
私はそれまで、高校の文化祭で、いやというほど独演会を経験していましたから、あがるということはありませんでした。一席演りながら、お客様が少なかったことと、その割にはよくウケたことを覚えています。感想としては、なんだかあっけないという感じでしょうか。
高座を下りてしばらくしたら、うちの師匠の春風亭柳朝が入ってきて、根多帖を見るなり、「いいか、『狸さい』っていうのは、二つ目以上が演るもんだ。前座は札まででおりろ」と、言ったのです。(春風亭小朝)
【蘊蓄】
目録に狸台には鯉を乗せ(柳多留:
目録には漢字の間違いで「狸」と書かれているが、台には鯉が乗っているということ。