69:金魚の芸者(きんぎょのげいしゃ)
【粗筋】 本所で金魚屋を営む六左衛門、池から飛び出した金魚を救ったところ、夢枕に金魚が立ち、人間の姿で芸者になって恩返しをしたいと言う。 翌日、本当に金魚がお丸という女になって現れ、自分を芸者に売って金を得るようにと言う。さっそく、柳橋の吉田屋へ売り込みに行き、主人と話をすると、どぶで拾ったとか、お麩が好きだとか、妙な会話はあったが、すっかり気に入られ、最後に声を聞かせてくれといわれて、清元を語る。「ああ、いい声(鯉)だね」「いえ、実は金魚です」【成立】 三遊亭円遊(1)作という。「錦魚の御拝謁」「金魚芸者」「金魚のお目見得」とも。【蘊蓄】 金魚が中国から移植されたのは文亀2(1502)。江戸期にはワキン(国産)とリュウキン(中国産)、ランチョウ(朝鮮産)の掛け合わせ、養殖や品種改良が行われるようになった。夏の風物詩となる金魚売りの登場は安永年間(1772~80)である。ちょうど笑い話の本が大流行を迎える時期と重なる。