19:義太夫息子(ぎだゆうむすこ)
【粗筋】 義太夫に凝った若旦那が、毎晩遅くまで浄瑠璃の稽古をして帰るので、家の方でもあきれ、その日はどうしても戸を開けてくれない。それなら夜通しここで浄瑠璃を語ってやると始めたが、ちょうど通り掛かった巡査にとがめられ、巡査が戸を叩いて開けてもらう。中へ入ってからも、親父の説教に浄瑠璃で相槌をうつばかり。母親が、「稽古に夢中になるのは、若い頃には仕方のないことですぉ。私たちも稽古屋で結ばれたんじゃありませんか」 ととりなしたので、若旦那面白がってその話を聞きたがる、親父が、「もういい、お前も毎晩戻って来て剣突を食らうのは面白くないだろう」「剣突くらい何でもありません。床へ出たら、いつも槍ばかり食います」【成立】 上方の「浄瑠璃息子」を桂文楽(8)が東京へ移植したもの。【蘊蓄】 「槍を食う」とは、客にやじられること。