125:神様(かみさま)
【粗筋】 「おう、八っあん、どこ行くんだい」「何だ熊公か、一緒に行くか」「何か面白ぇことか」「職人連中が集まって、新しい動物をこしらえようってんだ」……この二人、神様なんで……最近動物を作るのが流行で、よし公は腕がないからヒモのようなものこしらえて「ヘビ」だという。松公は安い材料で大物を作ったが置き場がない。海に浮かべて「クジラ」って名を付けた。三公は居眠りをして馬の首をやたら伸ばして「キリン」を生み出し、また居眠りして鼻の長い生き物を作ってゾーっとしたと言う。八公本人も、住宅付きの動物を作ろうと、ナメクジを貝に入れただけで「でんでん虫」という、手抜き作品しか作っていない。 変な物ばかり作るから、みんなでいい物を作ろうってことになった。案が集められて、形が作られて行く。「この頭みてえなのは何だい」「頭だよ」「手のようなのは」「手だ」「足みてえなのもあるが」「足だよ」「じゃあ、俺たちと変わらねえじゃねえか」 というので、顔を違うものにしようと、目を付けるが、前後に一つずつ付ければ両側が見えるので便利。しかし、寝る時下になる方が可哀そう、ということで二つ並べることに決まる。耳は一つでいいが、左右に一つずつ付ければ、人の意見が右から左へ抜けるようになる。口は三つほしい。酒を飲み、つまみを食べながら、おしゃべりも出来る。手は6本ほしい。つり革につかまって新聞を広げるのに、鞄も傘も無くさない……あ、5本でいいか。要らない一本の手はポケットに入れておけば寒くない。前にタコという生き物を作って、何に使う手なのか分からなくなったという失敗があったので、この意見は却下される。 こうして出来上がった「人間」がわがままで、奥さんが欲しいと言う。バスト99、ウエスト60……メートルじゃねえよ、センチだってんでその通りに作ると、何かとても変な物になる。「おい、あのサイズは幅じゃなくて回りの長さだ」 と言われてそこは直したが、口が大きいと大食いでおしゃべりになるぜと言ったら、本人が、「何言ってんのよ、勝手なことばかり言って」 と怒り出した。すぐにガミガミ言う失敗作だ。新しいのを作ろうと言うと、「私がいながら他に女をこさえるんですか」「何、人並みに焼き餅をやくな、この化け物」「私のどこが化け物なんです」「自分の頭をよく見ろ。角が出ている」【成立】 神津友好作、春風亭柳橋(5)が演った。