今年じゃなくって……昨年読んだ本:その14
「報告している途中で年が変わったから、ややこしい」「タイトルどうしようって、悩んでいるのは大家さんだけでしょう」「ともかく、昨年読んだ本のまとめ」「はい」131「復活の日」小松左京「新型ウィルスによって滅び行く恐怖を描く前半。各国がそれぞれ情報を少しずつ持っていながら、公開しない。読む方は全体を結び点けることが出来るのに……私が面白く思ったのは、この国際関係の問題を見事に描いたという点。そこに生き残った者はどうなるのか。どのの国の人なんて言っている場合ではなくなったのである。B」132「中国悪党伝」寺尾善雄「さすが、中国は悪人もスケールが違う。こんなのばかり読んでると、現代の政治家など視野は狭いし、ほほえましいと思えるくらい小さい小さい。面白いが、面白いよって紹介しているだけで読み応えがない。C」133「暗殺春秋」半村良「人を殺して大金を奪い、江戸に舞い戻ってまっとうな生活に戻ろうとする主人公だが、血に飢えた自分自身をどうしようもない。また、頼まれて殺しの道に入って行く。悪人達を殺すことは、一見正義に見えるが、やはり人殺しという悪なのだ。最後も予測される通りの落ちで、どうもいただけない。D」134「幻の島」笹沢佐保「島で起こった殺人事件を調べに行った刑事が殺された。身分を隠して捜査に行く主人公だが、早くも島へ向かう船の中で襲われる。まあ、それにしても、最初から事件を調べるのがバレバレの言動で、回りの人が刑事と気付かぬのなら、よほどにぶい人だろう。回りの怪しい連中も、見え見えの行動で……結局最後は意外などんでん返し……って、それはないだろうという落ちで終わっちゃう。何なのこれ。D」135「川釣り」井伏鱒二「釣りに関する随筆。小説だといっても過言でない。いい文もある……ということは取るに足らぬものも……C」136「竜の夏」川又千秋「何これ……というのが文体。例えば『抜けるような朝』という日本語の間違いから始まるのだが……どうも後を読んでいくとわざとやっているのか……とてつもない数の間違いが登場する。未知の世界だから、それが正しいのかな。でもそれがSFなのだろうか……『よってなぜならば』とか『またはかつ』とか、数学的記号で話をするのも変。心理描写や人間描写が何のためのものなのか……人物達が結局何もしない、何もできない、何にもならない結末というのが全て。D」137「北斗の人」司馬遼太郎「幕末の剣豪千葉周作の若き日を描く作品。全国武者修行がメインで、江戸で道場を開くまで。後は付け足し。たまたま読んでいる最中に東京駅の辺りを歩いたら、弟の道場跡を見つけた。司馬遼太郎の作品の面白さは、歴史上の人物に人間的魅力を備えさせたということじゃな。こうした比較は批評としては間違っているのだが、『竜の夏』に足りないのは人間的魅力なのだ。B」138「羽衣の女」高木彬光「昭和の初めから戦中を舞台に、男に捨てられ病に冒された女性が、彫り物をすることで新しい自分を見出して行く。彫られた絵から羽衣のという二つ名で呼ばれ、世間からは白い目で見られ、愛する男によって悪に導かれてしまう。実在の女性をモデルとしているが、彫り物をして強くなったように思うのが、実は弱さの裏返しなのである。C」139「犬のいる窓」平岩弓枝「犬の調教師が、彼を愛する獣医の男(?)と、犬たちと共に事件を追う。この設定は面白い。それで事件を追うのもなかなか。主人公が女に甘くて、その都度獣医が焼き餅を焼くという……事件の真相は……ううん、それでいいの……人物全てが関わって来るのも出来すぎという印象。現実の事件なら、登場人物が実はすべて関わっていたって結果は事実は小説よりも奇なりといって面白く思われる。オリエントエクスプレスのように、登場人物全部が犯人というのはまだ許せる。しかし、人物が様々な形で関わり、何らかの形で全員が事件に関わるというのは、あまりに出来すぎ。ドラマにもよくあるが、作り物にしか感じられない。C」140「迷走法廷」和久俊三「ホテルで監禁され5億円が奪われた。やがて犯人が逮捕され、老弁護士がその矛盾を突くが……一審はこの弁護士の追及の面白さと、判決の内容が面白いのだが、実話を基にしたため、二審の展開が早すぎる感じ。助手の女性が目先に気を取られてしまうのは、我々と同じ視線なのだろうか……二審で真実を追求という点にもう少しあれば本当に面白いのだが。C」「取り合えず、今年……いや、昨年ここまで読み終わりました」「まだ読み終わっていない本も沢山あるんですね」「購入したり、図書館のエコブックでいただいたのをタイトルだけ打ち込んだ。ちょうど200冊だから……」「まだ60冊もありますよ」「ううん……すでに今年10冊購入しているし……」「お金も掛かったでしょう」「定価を打ち込んで合計したら13万円余り」「すごい」「定価で買った物も15冊ほどあるが、そのうち半分以上は消費税をおまけしてもらった」「せこいねえ」「月2500円と予算を決めているが、それ以外にイベント……国際ブックフェアや落語家さんの集まり、出版記念講演など……もあって、実際に使ったお金は4,5020円でございました」「はい、続きはまた来年」「また今年じゃろう」「あ、そうか」