75:近所交際(きんじょづきあい)
【粗筋】 植木屋の八公が、お屋敷へ仕事に行き、女中と若い男が昼間からコトに及んでいるのを見た。たまらなくなって家に帰り、かみさんを口説くが、「岡場所へでも行っといで」と一分出して断られる。金を持って表へ飛び出した八公、隣の熊のかみさんに声を掛けられ、正直に訳を話す。すると、熊のかみさんが「私でよかったら」と言い出し、一分で相手をしてくれた。八公、家に帰ると、これまた正直に自分のかみさんに全部話してしまう。「まあ、それなら何も一分も置いて来なくていいじゃないか」「しかし、いくら近所付き合いだって言ったって、ただという訳にはいかねえだろう」「いいんだよ。あたしゃ、いつも熊さんにお金をもらったことなんかないんだから」【成立】 バレ噺といって寄席では聞けない噺……って、エログロナンセンスの流行った時代には平気で寄席で演る人もいた。 「間男七両二分」という題で紹介する小噺がある。間男が見付かって七両二分を請求される。五両に値切って家に戻り、女房に相談すると、「向こうから十両もらっといで。あちらの亭主とは三度何したんだから」……これは安永3(1774)年『仕形噺』の「あつかい」など幾つもの小噺集に出ている。金原亭馬生(10)は、この後「さすがは女房大明神」(他の人は嬶ァ大明神だった)、あるいは「でかした」と言って、「他にそういう口はないか」と続けていた。これは十返舎一九の本にあったのだが、出典行方不明。