もうひとつの果実店とレモン
もうひとつ、なくなった果実店があります。それが、梶井基次郎の短編「檸檬」で有名になった「八百卯」。ちゃんとレモンが店頭に飾られていました。この「八百卯」も明治からのお店。文学熟年の方々が京都に来ると、必ず寺町二条角のこのお店でレモンを買い、初代丸善のあった三条麩屋町西方面に向かったとあります。今でいう聖地巡礼ですな。沢山の若者達もアニメの題材になった地や人気タレントにちなむ地を訪れます。(そういえば私も娘にせがまれて人気バンドJanne Da Arcの母校、大坂・枚方の西高校に同行したことがありました。)「檸檬」は「寺町のお店でレモンを買って丸善書店の画集の上に置き...。」というちょっと妄想が入った散文詩的短編小説です。河原町に移転した丸善も2005年に店を閉じ、八百卯も2009年に廃業したそうです。これも時代の流れかな?うちの父は丸善でえらく高いメガネを買ってましたが、事故でメガネが壊れた時、無償で新品のように修理してくれました。そういう商売って、もう昔の話なんでしょうね。さて、「檸檬」では主人公の不安と憂鬱を吹き飛ばす大爆発のイメージシーンが当時の人々に衝撃を与えました。この小説を読んだかどうかはわかりませんが、ミケランジェロ・アントニオーニは映画「砂丘」で別荘を爆破させます。私は「檸檬」と言えば必ずこのシーンを思い出します。これもわかりにくい映画でしたが、空虚な現在社会に恋人を殺された主人公の幻想なんでしょう。ピンク・フロイドの「51号の幻想」をバックに怒りの大爆発。冷蔵庫が、テレビが、衣類が粉みじんになります。この曲は原曲「ユージン斧に気をつけろ」を煮詰めた演奏ですね。Zabriskie Point final sequence嫌悪すべき体制を吹き飛ばしたいという気分は分からんでもないし、破壊は一種のカタルシスでもあります。しかしそれに代わる秩序を用意できない限り、無意味なテロに終わります。良い子はマネしないでね。と、書かないと本当に実行しようとする人がいる現代の怖さ。「読書感想文のページ」檸檬/梶井基次郎のあらすじ