カテゴリ:山梨の民話 昔ばなし
山梨県の怪談○(江草・えぐさ)孫右衛門
『裏見寒話』「追加」(野田成方編)より、一部加筆
甲斐の北逸見筋江草村(現在の北杜市須玉町)の山中に異人あり。 延宝(1673~80)の頃迄は村人、 山に入れば何処ともなくやってきて、 樵夫(きこり)にまじわり斧を持て助力をする。 名は孫右衛門と云よし。折々人に語りかける。
我は上州(群馬県)の産、壮年にして父母を失い、 それより大酒・放蕩、親族の諌めを聞かず。 皆に見放され、生国を去ってこの国に来る。
鹿・猿・狐・兎の類を食とし、村へ出ない事数ケ年、 自然と山谷を我が家として年月を経る。 三十年以前までは府下へも出た、近頃は人の交りがるさく、 常に甲(甲斐)豆(伊豆)遠(遠江)山を回って楽しみとすると云う。
其後は折々人に見える程度で、人家に近よる事なし。 然るに、正徳(1711~15)の頃、 江草の村人が山に入って草を刈るに、 異形の者巖上に立つのを見る。 髪は眞白にして、その髭胸に届き、眼光燗々たり。 これを見る人、魂を失ひ已に迯(にげ)んとするに、 忽ち狂風が起り、黒雲山頭に満ち、雷鳴草を貫く。 これ、孫右衛門の熟睡の場を知らずして、 草を刈って驚かせしたからだと云う。 今も時々姿を著わす、 村人は恐れて「孫右衡門天狗」という。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年04月23日 19時11分54秒
コメント(0) | コメントを書く
[山梨の民話 昔ばなし] カテゴリの最新記事
|
|