カテゴリ:山梨の民話 昔ばなし
山梨県の伝説 〇金ケ嶽の薪左衛門
『裏見寒話』「追加」(野田成方編)より、一部加筆
逸見筋金ケ嶽の深山に新左衛門と云異人あり。 何時の頃よりか此山中に住み、山嶽を回り、 全休鬼形に化して風雨雷鳴を起す。 農家渠か怒りを恐れて此名を付しと云。
一読に、一年信州諏訪の温泉に、甲斐より來りて入浴するものあり。 余の入浴の人と睦まじく語る一人有、其姓名を問へば金ヶ嶽の新左衛門と答ふ。 山犬の類にして人に交る事なし。 客戯れにも鬼蓄に名を名乗る事なかれ。 また答へて云。我敷百年金ヶ嶽の嶺に住む。 天然と飛行自在にして、風雨・雷電を起し、 平日天狗と交りて魔術に通徹する故に、怒ろ時は鬼形に変して、 見る人死に至らしめ、和する時は人躰に化して交り結ぶ。 所謂、荏草の孫右衛門の如きは、術未だ至らずして自然の蟻化をなす能はず。 猛獣・蛇蝎(さそり)をはじめ我は恐るゝ者なしと。 其詞未だ終らざるに、忽撚として焔の丸飛來りて浴室の軒に止る。 新左衛門笑うていふ、是白猿といふもの也。良もすれば我共魔威を争ふ。 白猿は猿五百年を経て獅々となり、千年を経て自猿と成る。 叉、天狗と等しく猛悪無双にして、我慢心に誇らんとて如斯の怪異をなす。 併恐るゝに足らずと。笑ふこと常人に異ならすと。
山梨県の伝説 ○雨畑の仙翁
『裏見寒話』「追加」(野田成方編)より、一部加筆
府下より西南にあたり十二里余、身延山に続いて深山のよし伝云。 先国主の時、山奉行の士一両輩、主用にて彼山中に入り、 折節霖雨(ながあめ)巖上を濕(しめ)して嶺に登ること能はす、 半腹の小寺に止宿す。折から雨中の徒然圍を戴く。 何処よりか一法師来たりて、席上に立て碁の勝負を、 身に木の葉をまとひ眼中碧玉の姑く、自髪雪を戴く。 彼の士驚いて僧に問う。答て云、信玄の時三次の入道とかいへるが、 跡部・長坂(武田勝頼の家臣)の佞媚を厭ひ此山中に入り仙人となれり。 斯の如くの奇異をなす。しかし人に害ある事なしと。棊果て叉飛行し跡を失ふ。
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最終更新日
2021年04月23日 19時10分49秒
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