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2021年06月13日
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カテゴリ:文学資料館

作家 石原慎太郎(いしはら・しんたろう)

 

  国文學『解釈と鑑賞』 第38巻第9

  発行者 佐藤泰三 

  製作責任者 黒河内平

  編集 金内清次

  発行 至文堂

  一部加筆 山梨県歴史文学館

 

「略歴」 

 昭和七年(一九三二)九月三十日神戸市に生まれる。

 父石原潔、母光子の長男。次男は俳優石原裕次郎。

 昭和二十年神奈川県立湘南中学校入学。

 昭和二十六年父死去。

 昭和二十七年四月、一橋大学法学部入学、

 同二十九年社会学部へ転ず。

 十二月『一橋文芸』復刊第一号に処女作「灰色の教室」を発表。

 昭和三十年七月「太陽の季節」を『文学界』に発表。

 これが昭和三十年下半期の芥川賞受賞作となる。

 昭和三十一年一橋大学を卒業。五月「太陽の季節」映画化に際して自ら出演。   

」同年十一月から長編「亀裂」を『文学界』に連載。

 昭和三十三年、自作の映画化「若い獣」を演出・出演。

 同年十一月、江藤淳らと「若い日本の会」結成。

 昭和三十六年、日生劇場取締役に就任。

 昭和三十九年、長編『行為と死』を百出書房から刊行。

 昭和四十二年、日本文公家協会理事に就任。

 昭和四十三年七月、参議院議員選挙に全国区から立候補、

 三百万票を得、第一位で当選。

 昭和四十六年、書きおろし長編『化石の森』を新潮社から刊行。

 

【文壇処女作】 

 

 昭和三十年発表の「太陽の季節」は、文学界新入賞と芥川賞を獲得、新旧の世代間に社会的な反響をまきおこした。これ以来、芥川賞は社会事象のIつとなる。この作品は当時の若い世代、それも日ごろ文学には無縁の読者層をえて「太陽族」なる呼称を生む。その内容は、拳闘選手の学生とブルジョア令嬢との恋愛を通して、戦後の権威否定と肉体の肯定、新しい性のモラルのありかた等を追究したもので、大人たちの偽善的な道徳を正面から打倒せんとする意図が、若さの特権をもって鮮烈にはとばしっている。

 また、この作品は、文壇の域を越えひろく日本の社会層ヘショックをあたえた点、エポックメーキングな位置を有している。

 三島由紀夫や江藤原ら少数理解者を別にすれば、文壇的反発はかなり強かったが、それにもめげず作者は以後、文学・演劇・政治の各分野に旺盛な実践活動をつづけながら今日にいたっている。

 

【代表作品】 

 文壇処女作の「太陽の季節」のほかには、

長編「亀裂」(昭31・H~32・9)、

映画化もされた短編「狂った果実」(昭31・8)、

同じく映画化された「処刑の部屋」(昭31・3)、

のちにエッセイ集にまとめられた

「価値紊乱者の光栄」(昭31・8)、

同じく映画化された短編「乾いた花」(昭和33・6)、

同じく短編「完全なる遊戯」(昭3210)、

海外旅行ののち発表された短編「ファンキー・ジャンプ」(昭34・8)、

「若い日本の会」で知った浅利慶太の新劇運動に共鳴して書いた

処女戯曲「狼生きろ豚は死ね」(岡35・5)、

問題作として評判をえた「行為と死」(昭39・2)、

彼の思想か奔放にえがいた長編「星と舵」(昭40・―~2)、

石の森」(昭46)等がある。

 

【評価】 

 江藤淳氏は「石原の独創は、思想過剰の戦後にあって肉体の積極的肯定を唯一の精神的な主張とせざるを得なかった新世代の犀屈した声を、奔放無比な文体のうちに形象化したことにある。」

 といい、また別に瀬沼茂樹氏は

「彼(石原)の小説は『太陽の季節』に出発し、『処刑の部屋』『完全なる遊戯』『フ

″ソキー・ジャンプ』などを径て、『鴨』にいたる実験的な観念小説の系列に、本質的な意味がある。充溢して無定向な生貪慾の根源をさぐりながら、そこからの人間の回復をめざすものと考えられるからである。」

 と評している。

 いずれにしても石原文学は、その処女作から社会への明瞭な自己主張をもって形成され、はじめは戦後の価値観喪失の時代に、ことさらな反道徳的行為をもって自己の価値とする青春群像を作者自身の思想的代行者たらしめた。その背後にそれをささえたのは、石原、が従来の文学青年とちがった精神形成をおこなってきた履歴であろう。石原はスポーツマンであり、現在は政治家でもある。

 彼の文学を成り立たせているのは行動の哲学ともいうべきものであり、その哲学が一方で文学をうみだし、一方で政治活動やスポーツとなってあらわれるとみられよう。こうした点において石原文学に最も本質的な影響をもたらしたものはヘミングウエーの小説と、彼の行動、その生きかたではあるまいか。

 戦後のアメリカ文化が日本の若い世代に及ぼした一つのみごとな結実が、石原慎太郎に見られるのである。

 さらに特徴とすべきは、石原の文学や政治活動を支持する層が、いわゆる文学者層に限られていない点であり、戦後高度成長をとげた目本の中堅層市民のなかに多くの理解者を持っていると思われる点てある。

 反面その文学の評価においては、初期の既成道徳や社会倫理を逆転させようと試みた反社会性が、いつ、どのようなものの媒介によって、現社会体制の一員たる政治家につながったか、いれば彼の内的転向が文学的にいかに問われるかという問題がのこされている。ここに彼の行動を支える思想的な核が、たとえば行動において彼と全く対極に位置すると思われる大壮健三郎や小田実のそれと、どう異なるかが問題とされよう。

 また終始石原文学に理解を示しつづけた三島由紀夫のあり方とも、微妙に関係づけられるところといえよう。いずれにせよ石原文学は、戦後目本の一史的な意義と付設を保持していることは否定できないであろう。

 

【竜門挿話】 

 

 「太陽の季節」が、いわゆる。太陽族なる呼称をうみ、作中の性的表現における障子破りとともに芥川賞選考にさいし委員の意見が真っ二つに肯定と否定に分かれた挿話はあまりにも有名で、これが映画化されるや、作者ならびに作中人物のスタイル、とくに頭髪のいわゆる″慎太郎刈り″の大流行とあいまち、芥川賞受賞それじたいが社会的事象となったのは、日本の近代文学史上、エポック・メーキングな話柄といえよう。(落合清彦)






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最終更新日  2021年06月13日 07時06分13秒
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