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2022年03月11日
カテゴリ：柳沢吉保 山梨北杜資料室
柳沢吉里 大和郡山へ『兜嵩雑記（とんがざっき）乾』 當時天下之武将徳川八代将軍吉宗公之御治世相成、 享保九年二月廿九日夜に入、飛脚到来いたし、 将軍より彼成下ける奉書之由、甲斐守え訴之、 則拝見あれは 御用之儀有之候間參府可致旨被仰出其趣可被相心得候 恐惶謹言 二月廿八日 松平左近将監 安藤対馬守 水野和泉守 松平甲斐守殿 四五日之滞留にて發足道中常躰之日積にて參府可被致候 供廻り少勢被召連可然候 恐惶謹言 二月廿八日 松平左近将監 安藤対馬守 水野和泉守 松平甲斐守殿 右御奉書到着に付、一家中登城有て如何成御用に有けん哉と評儀恢々也、則甲斐守殿江戸表御竟足は三月四日御定、則御返書を認る 御用之儀在之に付參府可仕旨被仰付共趣奉畏侯 恐惶謹言 三月朔日 松平甲斐守 水野和泉守殿 安蘇対馬守殿 松平左近聘監殿 右御返書甲斐守家来蘭部七郎左衛門持參也、 甲斐守殿三月四日朱明に甲府表立給ふ、 御供之人々御家老貳人、柳澤市正、柳澤矢柄、並びに中老柳生内蔵助、番頭大石多仲、物頭秋田三右衛門、野澤藤右衛門、其外拾人目附、 近習小姓、徒士召連られ同六日に江戸御着、 十一日登城有けれは、君上意には此度大和國郡山え所替可致、 尤彼之地は禁裏守護を蒙所也、大切に可相勅旨被仰付、 奉畏候と御請也、去程に御国元見、直に御知らせとして、 十人目附赤松銀右衛門早馬にて馳出し、 翌十二日視末之刻に着到いたしければ、 家中之面々夢見し心地して惘果てたるばかりなり、 去れ共御国替之賀儀として、中豊原図書同時に甲府を出立して、 江戸さいわい橋上屋鋪え着いたしける、 扨甲府詰の家中方追々物毎片付に取扱、 武州川越より當所へ所替え漸々廿年之春秋を送り、 其内當所にて縁組杯いたしたる輩、或は江戸より川越移り、 叉候遥々遠き大和へ引越事、家中の人々嘆事尤至極せり、 最早面々荷物を作り、又は拂物杯して上を下へと騒ける、 去程に大和郡山の城請取之面々五月十一日甲府出立也、 其人々には 柳澤権太夫 柳澤帯刀 柳澤筑前守 柳沢隼人 溝口平太左衛門 山崎郷左衛門 田村儀助 柘植七左衛門 近藤大學 青木左兵衛 石澤左太夫 池上善左衛門 松平酒造丞 山藤久左衛門 梶村七兵衛 山口八兵衛 藪田忠左衛門 千紫與七郎 矢野庄兵衛 飯塚文四郎 多賀半七郎 蘆田方友衛門 岩田六左衛門 高橋舎人 興部七郎左衛門 平野源左衛門 ト川平角 設楽金左衛門 小畑熊次郎 本多平馬 伊鐡助兵衛 長堀秀作 大森角太夫 丹羽與太夫 内田半次郎 新發田八右衛門 丸毛新右衛門 寺内重次郎 横山平助 田中源五右衛門 山崎叉右衛門 吉岡萬右衛門 村田源之丞 尾澤六左衛門 長谷川勝之助 石井三郎兵衛 市川嘉兵衛 折井源太左衛門 壱番立 以上 五拾騎 雑兵印に不及 右之通五月十一日より廿日迄壹番立、 同廿一日晦日迄貳番立、如期段々四香迄に相極まり出立しける、 中に一家老柳澤権太夫、柳澤筑前、右両士之出立道中之行列三四萬石 之大名之道中気是には優るまし 貳番三番之面々北八名前を書記にいとまなし。 甲府城 御引渡之事 ・享保九甲辰年五月下旬、國中委細之書物其外城内諸事請取として、 御代官河原清兵衛到着、 叉六月九日御上使竹 中主水、酒井監物到着し、辻々に伺公す、 御馳走には甲斐守殿家来番頭酒井外記、先達て笹後峠迄御迎に出る、 府内金手町楯際迄家老鈴木大内記、川口石見、城代平岡監物罷出る、則上使是にて下馬して御挨拶有、 同橋より西は中老豊原圖書、根津丹下被參、 誠に武家の作法一つとして残事なく萬事行屈事也、 扨互に式禮事終、則旅宿三日町え両士は着座致ける、 所特に付彼是御制札御渡し有、請取方は鈴木大内蔵、 町奉行桐生治右衛門用人立合にて頂戴す、竹井宗兵衛寫之 条々 一、今般當城申請取之儀は松平豊後守被仰付井在番之儀は、 豊後守家来可相勤事 一、萬事御法度之趣急度可相守事 一、所替えに付百石に付人足壹人馬壹疋差出之二日路可相送る事 一、喧嘩ロ論可慎之若異変之族其双方善悪不加可焉誅罰之 萬一合荷據者共其咎可重従本人事 一、猥に不可伐採竹木並押買不可狼籍事 一、家中の輩武具諸道具可任其身心事 一、秤貸之吸蔵より出之借付設儀於無其疑は可埓牧納事 附年貢未進可棄指事 一、未進方え取遣候男女之儀主従相対次第可致但し 廿年過は可爲譜代事附譜代に出し置男女之儀於其紛は譜代勿諭事 一、借物其可爲証文次第事 右之條々堅可相守若相背者可處蔽科者也 享保九甲辰年六月 酒井監物 竹中主水 右御制札八日町札之辻に建、明れは十日御内見として、 御両使並び河原清兵衛登城有て委細内渡相済、 其外家中屋鋪、組屋鋪、壹番より百九拾番迄、 郭外之分屋敷都合三百七十五屋敷、其外与力屋鋪、 組屋数等小屋には番付なし帳面にてわたされけり 遠江國浜松之城主松平豊後守殿、 甲陽御城受取役として六月十一日卯上刻、 御上使用人、御代官河原清兵衛八日町見付より入給ふ、 豊後守家来いずれも大様に出立、 各陣羽織、陣笠を着し、織地に火縄をかけ、 一番手は片羽町迄見附より鉄砲三拾挺、弓三拾張、長柄三拾筋、 騎勢十二騎、 貳番手は山手見附より入右同断、則豊後守殿入らせ給ふ、 惣勢一緒に集り、追手之堀の前より八日町見付迄並ひ居たり、 叉甲斐守殿家中は大半穴切見附より山手御門際迄、 此間拾町斗皆麻上下を着し、首尾よく引渡相済、 夫より家中は片羽見付より出たり、則其出立行列左之通りなり 小人目附貳人、武具奉行山崎助右衛門、旗竿三本、旗、長持一ツ、 旗奉行荒川忠八、与力一騎、小屋頭一人、鉄砲拾挺、足軽拾五人、 玉箱一つ、弓拾張、足軽拾五人、箭簟筒一つ、足軽弐人、 物頭加古郷左衛門、与力、小屋頭、鉄砲拾挺、足軽拾五人、玉箱壱つ、足軽二人、弓拾張、足軽拾五人、箭簟筒一つ、足軽弐人、 物頭飯塚杢左衛門、与力小屋頭、鉄砲拾挺、足軽拾五人、玉箱一つ、 弓拾張、箭簟筒一つ、足軽拾五人、 物頭松平傳左衛門、長柄奉行堀三郎兵衛、長澤八郎兵衛、 長柄二十五筋、 武具奉行兼松治右衛門、鉄砲奉行高山三郎左衛門、 小人目附、馬廻り役汀喜平次、 取次役川口十太夫。酒井左衛門、松平小平次、森宗右衛門、辻平八、 鹿坺久太夫、長谷川喜八、松平喜右衛門、疋田勘右衛門、田中雲八、 榊原利左衛門、松本儀兵衛、川谷甚内、古木丈太夫、坂庭権兵衛、 豊田與一左衛門、鈴木惣左衛門、飯島三太夫、一色卯兵衛、 稲生次左衛門、福井惣左衛門、大館左平次、井口與惣次、 打越越丈右衛門、永井彦太夫、酒井ト記、飯塚彦右衛門、 大石多仲、的場甚太夫、吉田藤太夫、西久保與市右衛門、望月勝右衛門、一柳六兵衛、大山五左衛門、細木半助、豊原図書、根津丹下、 浅利藤左衛門、平岡将監、川口石見、鈴木大内蔵、大森次右衛門、 足軽貳拾人、持筒頭山本十郎右衛門、足軽貳拾人、 都合騎馬勢元拾五騎、 けふそ甲府の名残とても皆々晴の出立にて、 行列美々数見物之貴賤老若眼を驚かす斗成り、 去程に松平豊前守殿家来川瀬助右衛門、鞍置三郎左衛門、 其外数多之人数にて御勤なり、 扨も拾五萬金石の御大名、しかも萬代不易之御朱印於けれは、 中々国替えは有へきとは思はれす、國中豊に憐慾を加へ、 御政道賢く、賞罰厳重於けれは、 市中は申不及國中之老若男女悦ひを於ける所に、 思ひも寄らす事なれは、 只夢の畳たる心地して忙然としていたりけり 御家中惣人数覚 一、人数合三千式百二拾三人 此知行高 地方弐高石 御蔵米拾六高俵 但し三斗六升入 給金 壱萬三千両也 但し小判なり 抑、宮城（甲府城）は去る文禄年中浚野弾正殿御嫡子、 左京太夫殿御領地之時、御縄張有、その後度々城主替りといへ共、 迫々御普請有、 昔建長年中鎌倉の時代武田一條次郎忠頼、當國守認職にて有し時、 逆心之旨有之由、右大臣頼朝卿被聞し召、則大軍をもって御討罰有之、その後城跡寺地と成り、一蓮寺と申寺を建立し、 其後家康公今の城地御見立被遊その冬より翌春迄に新府中之町家今の所へ引越ける、 尤天正十午年冬御替地被下今の所へ引たり、 その頃一條町は寺の大門なり、此城中に出湯有、 此流末にて田を造るに依て此在所を湯村といへり。 當御城（甲府城）御普請之次第 天正十壬午年、家康公城地御見立被遊、御縄張有之、 叉文禄年中浅野父子惣堀に被成候、 慶長年中駿河大納言殿鳥居土佐守へ被仰付、所々御屋形御普請有、 其後寛文年中より寛永元年迄四拾四年之間、甲府宰相様御代、 同中納言様御父子、石垣並び角々之櫓御建被成候、 宝永二年より享保九年迄貳拾年之間、 松平美濃守殿並び御嫡甲斐守殿 御父子、別て御念被入御普請有、此時城内残る所なく御作事被成ける。 甲府御城下町教井人教調控 一 上下町数合四拾九町 町敷七拾九町 一 家数合千九百廿九軒 間敷一万二千四百廿四間三尺九寸 一 下府中木戸六拾ケ所 是は甲府様御代に御書付 一 人足高合七百三拾三人 毎月御扶持方附出 馬七十三疋づつ 一 上府中男女合 男 千十人 女 千二百八十七人 合 貳千貳百九拾九人 一 馬高合百六十五疋 一 下府中男女合 内男 五千十八人 女 五千六人 上下合 一萬二千三百二十三人 内男 六千三十二人 女 六千三百九十一人 上下橋数 二十六ケ所 但し 八カ所 板橋 十八カ所 土橋 此外 御郭内 十八カ所 御役引屋数 合 三百九十軒 町年寄問屋五人扶持 甲斐 古府中より新府中聞書 兜嵩雑記（とんがざっき） 于時天正十八卯年、浅野弾正殿御領國と相成、翌辰年齢統御築き可成、されと同年二月より御普請始る、則浅野弾正殿御縄張なり、 御祈願所は松本村大蔵寺、扱御統之模様は鶴翼なり、 御剔の水は藤川より引しとかや、 爰越後國高田郡之在に、津丸村と申所に来迎寺と申寺有、 此寺之住持は甲州西郡小笠原村之産なり、 延宝甲申（×寅か）年六月富士參詣之節、 志賀隨翁と申老人兼て知る人のよし、 府中端泉寺門前に右来迎寺之僧を差置候よし、 八日町一町目目坂田喜兵衛実父長三邱「法師善長物語」、 其後来迎寺甲府に壹ケ寺出来之由、 右端泉寺之裏門は其頃煙硝蔵有之し由、且叉町々會所屋鋪有、 此頃は名主といふは無之、只長サ人と申會所屋敷にて、 都て御公儀様御定めを申し渡し、 寛永の頃は八日町を八日市場小路といふ、 三日町も三日市場小路、 八日町之侍所は壹丁目南側五間口、 寛永元（甲）子年山八幡神主住居なり、 その後明暦ころは西八幡村え引越し申し候、 伊勢町は今は山田町と申し、甲斐守様御領國に相成り候より改、 上伊勢町侍所北側三間口、下伊勢町北側五間口、 府中海野小路は穴山町也、壹丁目東側了圓寺、 此寺海野小路より瑞泉寺寄附いたし候よし、 横近習町観行院、侍所屋敷、 柳町三丁目東側五間口、 貞享年中之頃迄は伊勢屋敷白壁にて裏に堀有り、 連雀町三丁目南側に紺屋屋敷、 三日町三丁目に西教寺、侍所、 工町に山神屋敷、折り廻りて桶屋町山の神屋敷有り、 鍛冶町権現堂有り、西一條町壹丁目北側戌亥門屋敷有り、 川尻町は今之緑町成り、圓成寺會所、 西一條町弐丁目裏は御用にて少々御年貢銀を出す、 八日町御見付御見付の橋甲橋と云う、 是は御堀御普請之節兜を剔出し候故右申候、 伊勢町見付楯を大蛇楯といふ、 穴切見付橋を鰻橋、 浅野弾正殿愛宕山御參詣之時愛宕町橋を将軍橋と名付給ふ、 御納戸小路の橋を武者橋、其下は山手橋、 片羽町之橋は筋違橋、 連雀町見付橋は甲府大納言様「続き橋」と名付給ふよし、 八日町下之橋に元禄年中迄土手脇に天王源兵衛、 金手町に鰻屋、虎屋、 大安寺前は六右衛門と中者賣女を抱へ、 蕎麦茶屋をいたし渡世致すものあり、 諸人此茶屋へ通しに思案致て此橋をわたる故、『思案ばし』と申錐ふ、 大安寺は戸田周防守殿御奉進、 文照院様、寅松君様と奉申上候御若君御手習はしめ御墨付被遊候間、 御鷹場橋と被仰しとかや、 誓願寺前『稲積橋』と申、 是は室城寺地蔵いなみの庄に被成御座候時之名のよし、 城屋町『上之橋』江戸城下の橋を『駒橋』と云、 是は御城番雨官重兵衛殿善光寺御佛參之駒橋普請有之、 はし無之政策兵衛殿馬にて乗越被通候故、夫より『駒橋』と名付し由、 柳町下の橋を『遊行橋』云、 遊行上人御通り之節諸人參詣のともから十念相請勤故、 夫より『十念橋』と唱へ申し候よし、又は『迎橋』とも云、 是は御巡見様御出之節御城代様御迎に御發駕被成候付、 夫より『迎橋』とも云う、銅岩村に武田家之屋鋪有、 銅岩村より百姓六七人来り住居に定罷在候所、是より銅岩村と捷、 是は古闘村人合之由、今に米京桝六升つゝ、古闘村より差出し、 馬六疋宛山人にいたしけり、 され共遠路にて山人に致かたし、家造り杯材木澤山自由成所也、 古城下ふとり張町、天王横町、御成道小道、一條小路、 是は古城迫千之下也、 天正十三同年浅野弾正殿紀州和歌山見所持、 加藤遠江守殿甲斐國一圓秀吉公より給ひ、 又同戊年加藤遠江守殿羽州會津へ所替え、 慶長三四年秀吉御他界、 其後東照神君（徳川家康）三州、遠州、駿州、甲州、信州五ケ國 秀頼公より預り、 同五成年御城代平岩主計頭知行三高石、 同六亥年より奉行廻り有之、同年より國中御縄入、 御奉行御郡代伊名熊蔵、同年五月主計頭殿諸向、 諧職人等家業所々御尋御吟味之上免許被仰付候、 布役一反に付七匁五分を出す、是を世に糸目と申候、 武田家之掟御仕置通り也、扨叉所々御關所にて布役御改有之、 其後同三亥年八月平岩勘三郎被仰立、右布役御免被成下、 圃民御慈悲之段難有御事と奉存候、 甲斐國中、道通りは 本栖村、精進村、右左口村、蘆川村、古闘村、三帳村、高萩村、仲山村、畑熊村、九一色村、 此十ケ村其砌人馬往未諸役御免枝仰付候、是は日本国中如斯之よし、 其砌迄は買守渡邊氏所江持にて御代官仕候趣、 其後御公儀様御蔵納に成り、
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最終更新日
2022年03月11日 09時32分14秒
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