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夢先生の玉手箱-annex

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カテゴリ:幼児
金曜日の最初のレッスンは、今月開講した年少さん
レッスンの途中でお兄ちゃんを習い事の送迎の為に
お母さんが教室を離れることが嫌でたまらないNちゃん。
第1週目、涙ぐみながらも、懸命に最後までやった。
第2週目、声を上げて号泣し、お母さんが連れて帰る。
第3週目の先々週は号泣したものの、最後は落ち着いてレッスンを見ることができた。
レッスンの様子はこちら
そして先週の金曜日がやってきた。

レッスン前に外国人講師が心配そうに尋ねてきた。
「今日、Nは来るかしら?」
「お休みの連絡がないから来ると思うよ」
「そうだといいけれど…」
「先週も説明したように、彼女が泣き出したのは、レッスンが嫌とか、
 一緒に学ぶ仲間が嫌というのではなくて、
 お母さんが自分を置いて、お兄ちゃんのところに行くということが
 嫌でたまらないだけで、彼女の年齢的と性格的な問題ですよ。」
「先週、あれほど泣いていたのに、どうして泣きやんで、
 最後は一生懸命レッスンを見ていたのでしょう?」
「彼女も自分がいけない、無理なことを言っているという気持ちは
 もともと持っていたんだけれど、
 感情的に引っ込みがつかなくなって泣きやめなくなっていた。
 お母さんに電話したい、という要求が通ったことで、
 彼女もメンツが立って、落ち着いて泣きやんだのだと思う。
 本当はレッスンに参加したかったのだけれど、
 おもらしして、パンツが濡れてたから、恥ずかしくて教室には入れなかったのよね」
「それならよかった。」
「そうそう、彼女に、今週も塗り絵をやってもらうように
 先生にお願いすると約束していたので、塗り絵のアクティビティを入れてくれる?」
「もちろん」

ところがレッスンが始まる時間になってもNちゃんとお母さんはやってこない。
それに前回絶好調だった、Eちゃんが、
今日はぐずり気味でお母さんから離れようとしない。
眠たいのか、腫れぼったい顔をしている。
そろそろ教室に入るころ、泣き顔をしたNちゃんがやってきた。
「ハロ~」とお母さんが私たちに声をかけると
一緒にちいさな声で「ハロ~」と言うものの、笑顔はなし。
でも、出した私の手を握り、教室に入っていく。
お母さんは、そのまま教室を離れたが、泣き出しはしなかった。
お母さんと離れないEを見て、一瞬泣きそうになるが、
楽しそうに歌を歌っている他の生徒を見て、
一緒に歌い始めた。
Eちゃんは、よく見ると額の虫さされの跡がどんどん腫れ、
指先から手へと、赤くなり、むくんできている。
これは、ただごとではない。
「痒いの?」と尋ねると
「うん。かゆい」とだるそうに答える。
お母さんが、昨夜も痒くてあまり眠れていないと言う。
お母さんに、今日のレッスンは受けるのを止めて、
来週もう一つの年少クラスで今日の分の振り替えをして、
このまま病院に行ってはどうかと話しをし、
お母さんも了承し、すぐに病院へ向かった。

歌からTPRに進んだころには、Nはすっかりレッスンに夢中になり、
その後の外国人講師の絵本の読み聞かせ、アクティビティでは、
時折、笑顔を見せながら、外国人講師の質問に答えていた。
そして塗り絵のアクティビティが始まった頃
お母さんが教室の玄関から入ってきた。
「大丈夫でしょうか?」
「ごらんの通り、リラックスしてレッスンを受けています。」
Nちゃんの様子をガラスのドア越しに見る。
「出てきたら褒めてあげて、帰ったら、家族総出で褒めてあげて下さいね。」
「そうします。今日も行く前になって、
 英語に入らなければよかった、と言い出したので、
 だったら辞めるの?辞めたかったら辞めてもいいよ?言ったんです。
 でも、辞めるのも嫌だって泣き出して、行くと。」
「頭では、お母さんがお兄ちゃんの為に自分を置いて出ていくことは仕方がない、
 と、わかっているけれど、感情的には、まだ難しいのでしょうね。
 もちろんNちゃんの性格的なものもあると思いますけど」
「そうなんです。家でも嫌~と言って泣き出すものの
 暫くして、どうして泣いたの?と尋ねると、
 わからない、って答えたりするんです。
 お兄ちゃんは、こういうことはなかったので、こちらも焦ってしまって。
 でも、今日の様子を見て、親がおたおたしてはいけない、とわかりました。」
「Nちゃんも、今日は、お母さんがいなくなっても、しっかり出来たことで
 自信もついたし、ワガママを言って怒られるより、
 きちんとやって褒められた方がいい、と学習すると思います。
 もちろん、これからもワガママを言って泣き出すことはあると思いますが、
 以前より悪くなることはありません。
 戻ったように見えても、少しづつ進歩、成長していますから
 安心して、焦らず見守ってあげて下さい。」

山あり谷ありの幼児クラス。
その中でも最年少の年少さんは、体調によって気分も大きく変化し、
毎週同じように進んでいくということはあり得ない。
しかし、年少さんの心の成長速度は、その歩く速度とは反対に大きく
お母さんという庇護の元から離れ、
自分の力で進む一歩は、とても小さいが、
将来に向けて大きな、大事な一歩を踏み出している。
私たち講師も、跳び箱を跳ばせる時の補助者のように、
一人でがんばる小さな背中を支えて、
自分でできた、と思わせる経験をさせることが、
必要であり、極めて重要なことなのだと思う。





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最終更新日  2008年06月29日 17時54分01秒



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