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映画大好き夫婦のパリ新婚日記

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2007.08.21
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先日ようやく、前々から気になっていたペルセポリスという映画を観てきました。


この映画の原作はMarjane Satrapi(マルジャーヌ・サトラピ)というフランス在住イラン女性の
自伝的漫画。

↓このリンク先で、日本語版が3ページだけ読めます。




(*作者が「漫画と映画は別物」と考えている事もあってか、漫画は映画とは風味が違う
(もっとシビア?)みたいです。でも読んでみたいと思います。)


作者サトラピが親友のVincent Paronnaud(ヴァンサン・パロノー)と一緒に監督したこの映画は
今年のカンヌ映画祭で審査員賞をもらったのですが、公開されてからもとても評判がいいんです。

いざ観てきて、その理由がよく分かりました。





まずは、その味わい。

この作品はイランの裕福な家庭に生まれた少女マルジの10歳から22歳くらいまでの出来事を、
上の写真通りの実にシンプルな線で見せてくれています。

その古くさいほどの素朴さは、アニメ映画に不慣れな私にも心地のいいものでした。

かと思えば逆に、主人公が有頂天になるシーンでは花が舞ってきたりするのですが、
その花はキャラクターとは別次元からやってきたかと思うくらい凝った線で描かれたものなのにも
関わらず、マルジ達にマッチしていて・・・イラストだけでも、なかなか見応えのあるものでした。

(ちなみに作者はイラストレーターだそう。)





「シンプル」にされているのは絵だけではありません。

1978年以降のイランを描くこの作品にはもちろん、イスラム革命やイラクとの戦争が
描かれています。

なのでストーリーが進むうちに観客は当然、その時期に起こった親戚の逮捕・処刑や、
国外に出してもらえない故の知人の病死、爆撃による知らない誰かの死なども目の当たりにします。


こう書くと映画の主旨が分かってしまった気がしますよね。

ところがこの作品は見事、「ありふれた反戦もの」になるという陥りやすい罠を回避する事に
成功しているのです。

それは、上記の様な悲劇的な出来事がまるでちょっとしたエピソードの様にしか扱われていなくて、
むしろマルジの成長の物語にこそ焦点が合っているところにあります。

(マルジの青春期の個人的出来事は、映画を観ての(または漫画を読んでの)お楽しみなので
ここでは書きませんが。)


確かに、マルジの近親者に起きた悲しい出来事は「イラン育ちのイラン人女性の手記」には
外せないものだと言えるのですが、もしこういった事柄のみがクローズアップされていたなら、
この映画が私たちに与える共感の幅は狭まっていたでしょうし、作品としては平凡なものに
なっていた恐れがあります。

イランならではの特殊な環境をクローズアップし過ぎず、(もちろんマルジはイラン人ならではの
苦しみも味わうのですが)若い頃の葛藤や焦りという人類普遍のテーマに重点を置いたからこそ、
この作品はサトラピが言っている様に「誰もが(映画の中に)自分に似たものを見つけられる」
ユニバーサルなものになったと言えます。





とはいえもちろん無知な私が、今まで考えた事もなかった(恥ずかしい!)イラン問題に
ちょっと興味を持つ様になったり、(作者自身が語っている様にたとえそれが
「(サトラピの)主観的」なものだったとしても)イランの一部の人たちの生活様式や考えを
知る事が出来た様に、この映画は社会的意義もメッセージも十二分も持っているのです。

ただそれを教育的なものとしてではなく、イランに興味のない人でさえもが
「ちょっと特殊な環境に置かれている、ある少女の成長物語」として楽しめる
エンターテイメント性の高い作品に仕上げているのは、まさにあっぱれ。


今年観た「ブラッド・ダイヤモンド」も、解決がままならない深刻な問題を、
誰もが楽しめる様に(これは「ペルセポリス」とは違って)フィクションも交えながら
上手に楽しく、そして苦しく訴えかけてくれ、とても感心させられた作品です。

こんな風に、世界情勢に疎い私にもちょっとずつ、でも色々考えさせてくれる映画達は
大歓迎!

これからも出合っていきたいです。


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最終更新日  2008.03.14 07:03:20
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