映画大好き夫婦のパリ新婚日記

ちょうどキリがいいので結婚準備の話を中断して、
観た映画の事を書きます。
ドレス探しの話の続きは
たぶん半日後ぐらいにアップする予定です。



実はもう１ヶ月以上前の事、
作品・監督・新人女優・脚本の４部門でセザール賞を獲得した
Abdellatif Kechicheの『La Graine et le mulet』を観てきました。

（監督がチュニジア出身なので名前の読み方がよく分かりません。
日本語サイトを幾つか覗いてみたら
「アブドゥラティフ・ケシシュ」と書かれている事も、
「アブデラティフ・クシシュ」と表示されている事もありました。）




私がこの映画を説明するとしたらこんな感じだと思います。

南仏に住むチュニジア出身の男、スリマン（Habib Boufares）は
60歳前後。
間にたくさんの子供をもうけた妻とは離婚して
質素なアパートに１人で暮らしている。
ある日作業場をクビになった彼は、
前妻の作るボラの入ったクスクスを出すレストランを開こうと決心し、
現恋人の娘にあたるリム（Hafsia Herzi）に支えられて奮闘する。
主人公をはじめとする多くのキャストを素人で固めたというこの映画は、
スリマンのレストランプロジェクトに関わる両家族を見事に映し出す・・・。
（注：題名は「（クスクスの）粒とボラ」という意味。
上のポスターに写っているのはHabib BoufaresとHafsia Herzi。）

予告編はこちらで見れます。

http://www.allocine.fr/video/player_gen_cmedia=18778668&cfilm=61185.html




う～～む・・・なんと言っていいのやらって感じです。

フランスのある家族をあくまでリアルに描写するという意味では
素晴らしい出来だったと思います。

特に前妻の家に子供全員が集まって昼食をとるシーン
（予告編でも見れます）なんて
みんなでわいわい話している様が「演技」には見えなくて、
帰り道に主人と
「どうやって撮影したんだろうね」
「フリートークでもさせたんじゃないの？」
なんて会話をしてしまったほどでした。

すごいなぁ、この監督・・・。




ただね・・・そのシーン、長いんです！長すぎるんです！！

笑える会話もないではなかったけど、
よその家族が喋っているのをずーーーっと見ているのは
ちょっと飽きてきちゃうものがありました。

それにけっこうな勢いで話す人が多いので、聞いていて疲れます。

自身の声も、そして実家の家族の声もどデカイ主人ですら
「ちょっとげっそりした・・・」
と言っていました。




絵画なら、印象派が好きな私。（ハイ、大多数派です。）

映画ももしかしたら
ある程度はデフォルメされたものが好きだったみたいです。
（CGを駆使したものは私にとっては「やり過ぎ」って感じで
興味をそそられないけど。）

この『La Graine et le mulet』は絵画に例えるなら
写実主義なのかもしれない。

クールベやミレーに素晴らしい描写力があるのは分かっていても
取り上げられているテーマやその切り取り方が楽しめない私には、
難しい映画でございました。




私としてはその長～い「家族での昼食風景」が終わった後、
スリマンとリムが開店準備のために市役所（？）などに足を運ぶあたりを
もう少し見たかったなぁ。

どうしてそんなシーンが気に入ったのか
自分でもよく分からなかったけど、
もしかしたらこのシーンは主要人物である２人が
私達観客を「（前妻との）家族」から
遠い場所に連れて行ってくれて少しほっとしたからかもしれません。




そしてここからは思いっきり個人的ですが・・・
この映画がつらかった理由の１つは最後の30分、
つまり実験的にレストランを開く晩にあります。

（ネタバレなので、白字にしました。
読むにはドラッグして反転させてください。）

スリマンの子供達がいざお料理をサーブしようとしたら
クスクスのスープはあっても粒がない事に気付き
（カレーライスで言うなら、カレーソースがあってお米がない状態）
大慌てするというハプニングが起こります。
何とか問題を解決しようと、夜の街にスクーターを走らせるスリマン。
その間、子供達と
（事情は知らないけどお腹の空いている）お客さん達も
「まだかまだか」
と待っているのですが、
私は普段から空腹なのにいつまでも待たされるのも、
また逆にお料理の準備がいつまでも終わらずに
お客様を待たせっぱなしなのも耐えられないので、
見ていて苦しかったのです・・・。
しかもアクシデントが未解決のまま映画が終わっちゃうし！

それでも見終わった後の後味が悪くないのは、
やっぱりHafsia Herziのベリーダンスのおかげでしょう。

もちろん綺麗だったし、
これには「この状況を何とかして！」とハラハラしていた気持ちが
和らげられましたからね。

あれ？

こんな気分を味わうなんて
私の気持ちはスリマンの子供達と、そしてお客さん達とも、
一体化しちゃっていたのですね！

実は観ている途中で
「う～ん、もう帰っちゃおうかな」
なんて思った事も何度かあったのに、
その割にはずいぶん入り込んでいたのかもしれません。




ちなにみにこの、
訛りの強いフランス語を話す移民系女性を演じたHafsia Herziは
セザールの新人女優賞を獲得したのだけど、
この映画での役があまりにもリアルだったので
今後どう脱皮するのかな、なんて漠然と考えていました。

でもさっきallocineで見つけた『Francaise』という映画の予告編を見たら、
こちらでは雰囲気の違う演技をしていて感心しました。

『Francaise』予告編
http://www.allocine.fr/video/player_gen_cmedia=18814856&cpersonne=135371.html

素人たちをうまく動かした鬼才の監督が映画の軸に据えたのは、
素晴らしい若手女優。

この映画、出来るべくして出来たのかもしれない・・。


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