テーマ:最近観た映画。(40129)
カテゴリ:フランス映画(今世紀)
クラピッシュの話題の新作『PARIS』を観ました。 心臓を患い死を覚悟した青年(ロマン・デュリス)が、1人で子供3人を 育てている姉(ジュリエット・ビノシュ)に病状を告げるところから 始まるこの映画は、様々なパリジャンを写しとろうと頑張っている群像劇。 上記の2人以外で何度も画面に登場してくる人物を (面識の有無を基準に)幾つかのグループに分けると、 こんな感じになります。 美しい女学生(メラニー・ロラン)に恋をした教授(ファブリス・ルキー二)と 建築家として成功している、その弟(フランソワ・クリューゼ)&妻の チーム。 ランジス(だったかな?)の市場で働く男女達(アルベール・ デュポンテル、ジル・ルルーシュ、ジュリー・フェリエ他)。 人種差別をするパン屋のおかみさん(カリン・ビアール)と彼女の元で 働く若い娘。 その他にモデルの一行やカメルーンからフランスへ向かってくる男など。 それぞれのグループはふだんほとんど関わりのない生活を しているものの、映画が進む中で何らかの機会に言葉を交わしたり、 軽くすれ違ったりします。 (1番多くのグループと接する事になるのは、やはり主演と思われる ビノシュとロマン・デュリスのコンビでした。) 国際的都市でありながら、実は小さな街・パリ。 なにしろ、パリ在住の日本人の間で有名な話に「パリの面積は山手線の 内側と同じ」というのがあるくらい。 そのせいか私は、パリでの知人数は東京よりもずっと少ないはずなのに 思いがけず誰かにバッタリ会った経験が多く、ふだんの生活でも 「今すれ違った知らない人と、またいつか会う可能性があるかもしれない」 などと思う事があります。 (実際には一切相手の顔を覚えていないのですが・・・。) そんな背景もあって、パリに居ると道行く人達に親近感が沸いたり、 その人達の日常を勝手に想像してしまう事もあるので、この映画の コンセプトはとても気に入りました。 また、クラピッシュは上記の中流~上流階級の人物達以外にも、 浮浪者や生活保護を受けようとする移民の家族をも作中にちらっと 登場させているのですが、私も小さな町に様々な人間が住んでいて、 しかもひとつ角を曲がるとがらっと印象が変ったりするのこそが パリの特色だと思っているので、この現実味にも好感が持てました。 個人的には冒頭で会話をしているビノシュとロマン・デュリスの、 汚い言葉を混ぜながらボソボソ話す「今風フランス人」の喋り方が 好きにはなれなかったものの(これはあくまで個人的好みですが・・)、 有名な俳優が揃っているだけの事はあり、2時間以上続く作品なのに 一切退屈しませんでした。 ちなみに私にはルキー二が良かったです。 ちょっとズレた教授役を哀しく、でもコミカルにこなしていた彼の フランス語が耳に心地よく、講義風景を見ていたら大学に戻りたい様な 気持ちにすらなってしまいましたからね・・・。 この映画の難点を言うならやはり多くの人々が指摘している様に、 登場人物が多すぎるため表面的な描写に終始してしまい 1人1人の人物像がじっくりと掘り下げられていない事でしょうか。 私はクラピッシュがあえてこういう撮り方をしているのだから それも仕方ないと思っていますが、まぁそう言われれば確かに 雑多な印象はどうしても残っているし、移民の家族や浮浪者を 1回だけ出したのも中途半端と言えば中途半端なのかな・・・。 でも、 「○○を徹底的に中心に据えた作品にすれば良かったのに」 (「○○」にはビノシュやルキー二の演じた役名などが入ります。) という不満を抱く人が多く居るのはそれだけ各キャラクターがしっかり 立っている証拠でもあるのではないでしょうか? この「○○」に入る名前が観た人によってそれぞれなのも、この映画の 面白さだと思います。 ただ、私がたった1つだけ本当に本当に残念に思うのは、パリの街が 期待ほどは綺麗にスクリーンに収められていなかった事です。 デュリス演じる病気の青年がバルコニーから眺める風景は あくまで私的なもののはずなのに情緒が感じられず、かと言って それ以外のシーンで写るパリにはポストカード的な美しさが 足りない気がしました。 パリという街はもっと美しく撮れるし、実際に撮られた実績もあると 思うのだけど・・・役者達に目を奪われていたからでしょうか?? それとも、自分の住んでいる街を買いかぶりすぎなのかな?? クラピッシュと言えば、まず日本公開当時に映画館で観た 「猫が行方不明」(1996)の良さがあまり分からず、 その後にビデオで観た「家族の気分」(1996)には 退屈させられた記憶があった為、その後の作品は全てパスして きていたのですが、今回の「PARIS」はようやく、 「観てよかった」と素直に思える作品でした。 「必見」とは言いませんが(私自身、あえて見直す事は無いと思うし)、 「一見の価値」はある映画だと思います(もしもTVのチャンネルを 回している時に偶然、放送しているのにぶつかったら、また最後まで 見てしまいそうな気がします)。 デュリス演じる青年の病状が深刻な割にさらっと観れてしまう『PARIS』、 機会があったらどうぞ 1番上の写真は『PARIS』の看板ですが、ライトが反射していてうまく 撮れなかったので、きちんと見たい方はこちらでご覧ください。 ちなみにこの看板の写真を撮ろうとしたら、真下にあった 「アステリックスとオベリックス」の宣伝に書いてある人物達の頭が 入りこんできて面白かったので、ついばっちり収めてしまいました) ブログランキングに参加しています。 投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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