カテゴリ:フランス映画(今世紀)
2月27日から公開された『Bienvenue chez les Ch'tis』。 あまりにも興行成績がいいのでどんなものかと観にいってきました。 映画の概要はというと・・・ フランス南部の郵便局に勤めているアブラハム(カド・メラッド)。 妻のためにコート・ダジュールに転属してもらおうと試みるも見事に失敗し (この辺がおバカすぎて笑えます)、なんとフランス北部のパ・ド・カレに 追いやられてしまう。 北での生活が果たしてどんなものかを調べるものの、入ってくるのは ネガティブな情報ばかり。 結局アブラハムは妻子を置いて、しぶしぶ単身赴任する事に。 ところがそこでの生活は捨てたものじゃない・・・それどころか、 美しい景観と人懐こい部下達(ダニー・ブーン演じるアントワーヌ他)に 囲まれた生活はむしろ幸せ。 なのに「北での生活は悲惨」と信じこんでしまっている妻には本当の事を 言っても信じてもらえず、彼は嘘をつきはじめるのでした・・・。 タイトル『Bienvenue chez les Ch'tis』は『Ch'tis達の地にようこそ』と いった意味で、Ch'tis(シュティ)というのは、舞台になった 北部に住んでいる人達の呼称です。 監督&準主役のダニー・ブーンはその地域の出身だそうで、 映画は人々の暖かさと、訛りの強い言葉や匂いの強いチーズなど、 土地の名物がばっちり伝わってくるものでした。 その中でも特にCheutimi(シュティミ)と呼ばれる、訛りが強い上 音声的にも標準フランス語と程遠い方言は、アブラハムと アントワーヌの会話が混乱する原因になったり、街の老人の口から出ると 訛りがひどすぎてアブラハムには一切理解できなかったり (もちろん私も主人もです・・・)、かと思えばアブラハム自身が シュティミを練習しだす愉快なシーンもあったりで、映画前半の あちこちでユーモアたっぷりに取り上げられています。 ・・・私は最初、たぶん誰よりもシュティミが分からず本当に本当に 苦労しました・・・。 私の主人もちんぷんかんぷんな言葉があったらしいのですが、やはり フランス人なので私よりも理解と習得が早いです。 結局私は、もともと後ろの方に座っていたのを更に後方に移動して、 主人に 「『ミ』がjeとmeの事だよ、『ティ』はtuとtoiの事だよ(そんなぁ・・)」 などと教えてもらって、ようやく映画についていける様になったのでした。 でも私の理解が追いつける様になったのには、もう1つ他の 理由があります。 初めのシーンこそ地元の人達は「シュティミ」ばかりを使っていたのに、 途中から主要登場人物達は、ある程度標準語に近いフランス語で 話していた気がするのです。 そうですよね、いくら観客が(うちの主人の様に)映画を観つつ 少しずつ「シュティミ」で言われている事が分かる様になったとしても、 全編それだとキツイですものね。 (微妙な匙加減に拍手♪) 映画のテーマはもちろん「シュティミ」などの郷土紹介だけでなく、 人間ドラマにも、あるのですから。 そうなんです、こういったいかにも「予定調和」がエンディングに待っている 作品のあらすじを書いてしまうと観る方の楽しみが減ってしまうので 上記のグレー部分ぐらいの事しか書けませんが、この映画は 笑えるだけでなく、人間の暖かみを感じて感動できる作品なのです。 大人と大人が知り合って仲良くなるには共通の趣味や視点を 持っている方が話が早いのですが(私はふだんどうも、そういった 楽な方に流されがちです)、1番大切なのはお互いを受け入れる 気持ちなんだなと久しぶりに思えました。 なんだかこう書くとまるでクサくて狙った映画みたいですが、カド・ メラッドとダニエル・ブーンはもちろん、周りを固める俳優さんが うまいので、笑いも感動も本当に自然に沸きあがって、いい気持ちで 帰宅できましたよ♪ (今回はフランス人達と一緒に笑えたので、余計楽しかったかも。) メラッドとブーンの他で私が特に良かったなと思うのは、ブーンの同僚の アナベルを演じたアンヌ・マリヴァンと、彼の母親を演じたリーヌ・ルノー だな。 さて最初の方に書いた通りこの映画は興行成績が異常なくらい良くて・・・ パリ近郊で、なんと最初の一週間だけで83万8千人集客したそうです。 そしてこの時点で既に「過去1年における、パリ近郊の累計観客動員数」 の7位に躍り出ました!! 1~6位全ては「レミーのおいしいレストラン」や「スパイダーマン」等、 子供もターゲットに入っている作品ばかりなので、(基本的には)大人を 対象にした映画としては、信じられない快挙です。 (8位は71万3千人集めた「アイ・アム・レジェンド」なのですが、これは 去年12月からの累計ですし。) まだ2週目の結果は知らないのですが、これからしばらくは期待できる はずなので、注目したいと思います♪ 言葉遊びなど日本語にできない箇所があるので日本公開は 難しそうですが、フランスにいらっしゃる方はぜひどうぞ (仏語が母国語でない方は、私の様に人の居ないところに座って 最初のうちはある程度フランス人に解説してもらった方がいいかも しれませんが・・・。) ランキングに参加しています。 投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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