テーマ:最近観た映画。(40112)
カテゴリ:フランス映画(今世紀)
ジャン=ピエール・リモザンの新作で『Young Yakuza』というドキュメンタリー映画を 1人で観てきました。 主人にこの映画を観にいくと言ったら 「え、なんでみにかーがヤクザ映画を観るの?(好みじゃないでしょ?)」 と聞かれたのだけど、それには一応ワケがありました。 それは今から数年前、友人の紹介でパリ在住の日本人とフランス人の交流会の様なものに 行った時の事。 私達日本人はフランス人から 「ヤクザを見た事がある?」 と聞かれました。 私と友人は 「ない」 と即答したのですが、どう見ても堅気の日本人ご夫妻はなんと 「しょっちゅうある」 と言ったのです。 私達が驚いて 「どこでですか?」 と聞くと、夫婦揃って 「いや、それはもうあちこちで」 という返事でこれにはびっくり仰天。 私は歩く時いつもぼーっとしているので、もしかしたらヤクザの存在も見落としていたのでしょうか? それとも見分け方が分かっていないだけ?? ヤクザと言えば北野武の映画で観たものしか思いつかない私の頭の端には こんな気持ちがもう何年もくすぶっていたので、この作品に飛びついてみた訳です。 このドキュメンタリーの初めの部分のあらすじと言えばパリスコープでの紹介文通り、 無職でぶらぶらしている20歳のナオキが「1年のお試し期間」という前提で 熊谷組という暴力団に入るという事です。 1番最初のシーンはある男(これが誰かは忘れました)がその母親に ナオキを熊谷組に入れてみてはどうだろうと提案するところなのですが、 ここを見ているとすぐに疑問が沸きました。 ドキュメンタリーのはずなのに、カメラワークが良すぎるのです!! 人物がこれからどう動くのかを知っている感じの、先取りの移動をするというか何というか・・。 これって「ドキュメンタリー」と言いつつも実は、シナリオも準備されている 「フィクション映画」なのではないかという疑惑が頭に浮かびました。 この気持ちは、ナオキが熊谷組に入ってからお茶の出し方を教わったりするシーンの間も 続きます。 熊谷組の起こす「犯罪的な行為」を一切撮影しない方針で作られた映画だと知ってはいたものの、 あまりにものどかな光景ばかりだったからです。 私はヤクザの内情と言えば、新入りがちょっとでも粗相をしたら 「バカヤロー!」 という声が飛び交うものだとばかり思っていたのに。 (たけし映画の影響ですが・・・。) 冷静に考えてみればヤクザが自分達の普段の生活の撮影許可を出すなんて不思議な話だし、 この人たちはみな役者で、住居はセットなのかななんて思ってしまいました。 この謎は最後の方まで頭の中に残っていたのに、それでも観ているのが嫌にはならないし、 最後にはそんな事どうでもいいとさえ思えてくるのだから、この映画は不思議。 それは前々から聞いていた通り、この映画では豪華な場所で騒いだり、暴力を振るったりする 既成映画に出てくる「ヤクザ」とは異なったアングルから、彼らが写されていたからでしょう。 この映画に写る姿が100%ではないと分かってはいるものの、事務所内における ヤクザ達の仲間内での生活は新鮮でした。 また、淡々と撮影されているはずの出来事にも、「フィクションが入っているかもしれない」という 疑惑が頭を掠めてしまうほどに、それなりの物語性が持たされていたのも大きいと思います。 観終わってから、上映開始直前に配られたこの映画を紹介している用紙を読んだら 紹介文に「docu-fiction(ドキューフィクション)」という言葉が用いられていました。 監督自身はこの映画を撮るに至った経緯について まず知人から一時的にパリに来ていたヤクザを紹介され、 そのヤクザから「日本のヤクザの内部生活を撮影してみる気はないか」と尋ねられて その時は不可能だと応えた事、 それでも日本を訪れた際には敬意を表して熊谷組の組長に会いに行き 数日をそこで過ごした際に組長の、自分達の事を撮ってほしいという強い気持ちに驚いた事、 なかなか「新入り」の来ない昨今だけどその視点から撮りたいと考えていたら 幸運にもナオキという新人がやってくる事になった・・・と語っています。 撮影については組長と、フィクション映画やドキュメンタリー映画を観ながら(!)よく話し合い、 「かちんこ」も使って撮影したのだという事です。 やはり100%全てがドキュメンタリーの映画ではないのですね。 でもそのぶん観やすかったし、街とヤクザとの関わりの変わってしまった様子を若い衆に説明したり 新入りとの接し方についてあれこれ語っている熊谷組長の考えが伝わってきました。 出演している人々を見て 「もしや全員、俳優さんでは?」 と疑ってしまったのは、誰もが自分の役割をあまりにもうまくわきまえた感じで カメラに収まっていたからというのもあるのですが、映画の出来た背景を読んで 一応はドキュメンタリーなのだと納得してスッキリです。 俳優ではない人々を上手に写すあたり、さすがは、演技が巧い訳ではない(ごめんなさい!) 吉川ひなのを主演にしつつ『TOKYO EYES』をおとぎ話の様な可愛らしい映画に仕上げただけの、 力量のある監督さんだなと思いました。 上にもちょっと書いた通りこの映画に描かれているのはヤクザ世界のほんの一部だと思いますが (だって組長の怒ってるシーンが1回もないし)意外な一面を見られたのは良かったです。 未知だった実情を知ったら知ったで 「ナオキ以外の人たちはなぜヤクザになったのだろう?」 という疑問などが沸いてきたので監督にはもう1度頑張ってもらって、もう少し深く掘り下げた続編を 撮ってほしい気もしましたけどね。 こう思える映画っていい作品だと思います。 あ・・・でも結局、ヤクザの見分け方は分かりませんでした。 意外にも地元の町にとけ込んでいるものなのだろうなという事は分かりましたが・・・ 日本の街角で黒いスーツの男を数人見たらヤクザだと思っていいのでしょうか(笑)? ランキングに参加しています。 投票(をクリック)していただけると、嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[フランス映画(今世紀)] カテゴリの最新記事
|
|