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映画大好き夫婦のパリ新婚日記

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2008.05.21
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忘れないうちに、先日観た『吉田喜重が語る小津安二郎の映画世界』(1993)の感想を
書き留めておきます。
(ドレスの話の続きは、また半日後にアップするつもりです。)

これは、NHKのETV特集にて4夜連続で放映された各45分のドキュメンタリーの総称。

先日観て満足した『吉田喜重が語る小津さんの映画』(1994年)
この作品を59分に要約したものだったので、オリジナルのこちらを観るのがとても楽しみでした。

こちらももちろん、小津作品を画面にたくさん引用しつつ
吉田喜重のナレーションが小津安二郎の映画について述べてくれるもの。

さすがに3倍もの長さがあるので、たくさんの情報が詰め込まれています。

なので色々発見できて嬉しい反面で更なる疑問も発生してしまったのですが、
途中から暗闇の中でとったメモも見つつ、覚え書きを残しておきます。

(ナレーションを一字一句正確に覚えている訳ではないので、
作品内とは異なった表現の箇所も残念ながら沢山あると思います・・・
ここにあるのはあくまで「要旨」です。
又、もしかしたら勘違いしているところもあるかもしれないけれど、
あくまで個人的なメモという事でご了承ください。)




この4部作を観てよかったのは何といっても、
何度も繰り返される「映画のまやかし」という言葉の意味を明確に分かる事ができた点です。

(前回は漠然と分かったつもりでいたのに、結局また忘れていたので・・・。)




吉田喜重によると、小津安二郎にはこんな主旨の思いがありました。

「映画で現実世界を映し出すのは無理な話であり、
映画で新しいものを創造しようなんていうのは驕りである」

ーそう考えて、アメリカのスラップスティックコメディーを模倣する事から始めた小津安二郎。

同時に現実世界が無秩序(戦争etc)なら、せめて映画に秩序を与えようと心を砕く。

この様にずっと、「映像に意味はない」という考えを抱いていた監督なのに、
1948年の『風の中の牝鶏』ではなんと、繰り返し映し出される階段が人間の怒りを表現してしまう!

以降、小津監督は
人間が結婚や別離(死など)の場面において「家族の中での自分の役割を意識する時」と、
人間がふだんの関係を超えて「赤裸々な姿をさらす時」(例:『晩春』の壷シーンの原節子)を
映す様になる・・・。

(こんな感じだったかな?)




こう聞くと、なぜ小津安二郎が何度も結婚や死をテーマに据えてきたのかが分かるし、
『晩春』(1949)や『麦秋』(1951)で原節子が時々妙になまめかしく描かれているのも
納得できます。

小津監督と最後に会った1963年から、いや、もしかしたら戦中に『父ありき』を観た小学生時から
その作品について考えてきた吉田喜重ならではの見事な解釈です。




他にも感心した事が多くて観られたのが嬉しかったのだけど、ちょっと気になる事もありました。

まずは、吉田監督によるナレーション文の最後に「~であった。」というごくシンプルな表現が
多い点です。

どこまでが確証のあるいわゆる「事実」で、
どれがごく一般的に言われている事で、
そしてどれが吉田監督による仮説なのかが区別できないのが歯がゆくって・・・。

私が細かすぎるというのもあるのかもしれないけれど、
そこで言われている内容に興味があればあるほど、そう言われている所以を知りたいと思うので、
根拠や出典が省かれている事が多いのは残念でした。




また、吉田喜重の長年の考えを3時間に凝縮するのは難しかったのでしょう。

『映画の中の人物が見ているにも関わらず画面には映し出されない東京の街』を
『つかみきれない人生』に重ね合わせるのは多少強引に感じられて、
でも同時にうまく言い得ている気もしたので
その説明をもっと細かく聞きたいという願望に少々じりじりとしてしまいました。

もう、こうなったら・・・吉田監督の著書『小津安二郎の反映画』を読むしかないみたいです!

日本帰国時に買ってこようと思います♪




上にも書いた『東京』と『人生』の対比など、この作品の中で述べられる解釈の中には
私がいまひとつ飲みこめないものもあったけど、それは吉田監督の言う通り小津作品が
「観る人に解釈を委ねる『開かれた映画』」
だからこそなのでしょう。

『秋日和』(1960)を例に挙げつつ述べられる『聖』と『俗』の区別など
私の一切考えた事のない話ももっと細かく聞きたいし、
本で吉田監督ならではの視点を更に知るのがとっても楽しみです。

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追記:
当たり前といえば当たり前の事だけど、
できればこのドキュメンタリーの前に小津映画をたくさん観ておいた方が楽しめると思います。
またどうしても4つの部の中には重複する箇所があるので、
それぞれの間に一定の時間を置いて見た方がいい気がします。
(私はポンピドゥー・センターでの観賞だったため全てを続けて見ざるを得なかったけれど、
『東京物語』の幾つかのシーンなんて確か全ての部に出てきていて、
いくら美しいシーンでも、4回も続けさまに観るとちょっとおかしな感じがしたので・・・。
放送当時の様に、4日かけて毎晩1つずつ観れたら理想的だったと思います。)










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最終更新日  2008.05.22 07:38:13
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