困っていること
10年前におつき合いのあった広告業の方で、ほどなく仕事を辞められたAさん。当時も仕事を軽く2,3本ご一緒したぐらいで、この仕事を離れられると同時に音沙汰もなく過ごしていた。当初は「お元気かな?」ぐらいに思っていたものの、それほど深い交流があったわけでもないので名刺さえも無くしていた。そのAさんが最近になって電話をしてきた。最初「まー、お久しぶり」と応じたモノの、あれれ…Aさんってこんなしゃべり方の人だったっけ???とすごく違和感があった。聞けば、数年にも渡って心の病に苦しんでいたとのこと。ああ、それはお気の毒に。当時から物覚えのすごくよかったAさんは、私の周囲の仕事仲間のことも事細かに覚えていた。あの人は元気か?あの人はどうしてる?え、もうおつきあいないの?あなたはあれほどお世話になっていたじゃないか、と。いやいや、でもそのおつき合いも10年前のこと。10年経てば環境なんてガラリと変わる。当時、幼い子供を抱えて打ち合わせにすら出られなかった私は今では少しぐらいなら取材もするし、周囲の仕事仲間たちも仕事の幅を膨らませている。あの頃は遊ぶ時間も余裕も、そして若さもあったけれど、今ではみんなそれぞれ仕事や生活に一生懸命だもの。――けれど、きっと彼の中では時間が止まっているのだな。それから時々電話がかかるようになり、そして毎回、私に何か「頼みごと」をするのだ。それも、本当に困っている風ではなく「なんでそんなことを?」というような問題をいろいろと持ってくる。本当に頼みたいなら何度でも同じことを言いそうなものだが、いつもその時限りというのも決まっている。今日は「10年前にあなたが持っていた本を今でも持っているか、探して欲しい」というようなことだったが、そんなものはない。10年といえば昨日のことではなく、ひと昔前のことなのだ。その前は「仕事の世話を頼まれているから誰か紹介してほしい」とも言われたが、そんなに簡単にできる話ではないし。第一、なんで私が紹介しなきゃならないんだ???実は困っている。彼の口調は時折酔っぱらいのようであり(それは薬の影響ではないか?)、どこまでホンキで取り合っていいのかわからないこと。私も心の病の苦しみを理解しないわけではないけれど、たった1週間で「お久しぶりです」と電話がかかってもうどう答えてよいのだか。彼からのお願いは結局すべて「振る」という形になってしまった。これからもそんなことが続きそうだけど、「できない」「ダメ」と否定ばかりしていいのかな。仕事前の忙しい時間にかかってくるのにも困っている。わが家はナンバーディスプレイではないから、受話器を取るしかないのだ。もし、こうしたうつ系の患者さんへの対応をご存知の方がおいででしたら御教授願えませんか?年輩者ゆえ、失礼のない対応だけはしたいのです。