テーマ:山登りは楽しい(12244)
カテゴリ:私の歩いた山と道
雨は本降りにはならなかった。中層を漂っていた雲の上と下は晴れていたようだ。流れる雲はときおり薄くなって、西側に立山と剱岳が隠現された。歩いていて、いつ顔を出すか、いつ拝めるかと、そればかりが気になって仕方ない。
南峰の手前で一瞬、さっとカーテンを引いたようにガスが切れて、ほんの20秒ぐらいだったけど、剱岳が望めた。前方の見通しもときどききいたが、すでに近づきすぎて吊尾根の形には見えなかった。 10時半過ぎ、南峰に到着。標高2889m。ときおりガスが切れるものの、展望はほぼなし。山頂の標のみが建つ、実に落ち着いた山頂だった。補給にパンを食べて、しばし休憩。 南峰から北峰も見えないが、とりあえず北峰は踏んでおこうと向かった。写真でみた記憶にある吊尾根のラインとは似ても似つかない急激な下りが続いた。おかしい。間違ってるんじゃないかと、降りながら疑った。でも一本道で間違うような分岐はなかった。 私の想像では、二上山の雄岳から雌岳へ移るぐらいの、そんな感じだったのに。なんだこのスリリングな足元は。さらに鞍部では、突風のお見舞いを受けた。身をかがめて重心を低く保っていないと、よろめくほどの横風だった。 折り返してくる人の表情が、猛烈な風に散々揉まれてすっかり青ざめているのを見ると、無理してまで両峰踏破することはないかな、と思い始めた頃、北峰のピークが見えた。助かった。北峰の標にタッチして、すぐに引き返した。ここも猛烈な風。この日、後立山連峰一帯の大気は不安定だった模様。 北峰で折り返すと、あとは往路を辿るだけの下山コースだ。 布引山のあたりで雷鳥に出会った。山道を前からトコトコやってきて、こちらに気づくとあわてて脇の岩場へ入り込んだ。それでも数メートルの距離だ。あまり人間を恐がらない雷鳥ではあるが、ちょっと近すぎるのか、かなり緊張している様子。驚かせずに、落ち着いた動作で何枚か撮影していると、飛ぼうか飛ぼうかと四、五回迷ったあげく、ついに緊張に耐えきれなくなったのか、飛び去っていった。 ハイマツの隙間から花を覗かせていた。ミネウスユキソウ。 ペンキ屋が養生シートをかけずに塗装作業をしたために、辺りの草花に塗料がかかって先が白くなってしまった、という感じの草花があれば、それはきっとキク科ウスユキソウ属で、エーデルワイスもこの仲間。 立山・劒の豪宕、峻烈、高邁の風格は雲間にわずか垣間見られるのみであったけど、 双耳峰と吊尾根も歩いていながら姿形を確かめられずであったけど、 山歩きの楽しさは十分足りた。 ゆるやかにアップダウンを繰り返す稜線を前に見て気持ち良く歩いたこと。 高山の動植物との出会いを楽しみながら尾根筋を歩いたこと。 普通のロールパンと普通のの水をとても美味しく味わえたこと。 そして詰まる所は、 条件にかかわらず山歩きを楽しめている自分と一緒に歩けたこと、 それが嬉しかったということになるか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.09.23 09:42:22
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