チェコもまたビール王国だ。たとえば、「ピルスナー」という醸造法はチェコの街プルゼニ(ドイツ語名:ピルゼン)に由来する。そして、アメリカのビール「バドワイザー」も実はチェコのある街の名前から取ったものなのだ。
それが、チェスケー・ブディヨヴィツェ。そういわれてもピンとこないだろうが、チェスケー・ブディヨヴィツェのドイツ語名はBudweiser。これを英語読みにしたのがバドワイザーなのだ。
といっても、あの薄い、水みたいなアメリカ製「バドワイザー」とチェスケー・ブディヨヴィツェのビールとは直接的には何の関係もない。アメリカのメーカーがビールのおいしいこの街の名前(英語名)を拝借したというだけの話だ
街の中心オタカル2世広場には、夏の間ビールを出す店のパラソルがずらりと並ぶ。端整なボヘミアルネッサンス様式がぐるりを取り囲む正方形の美しい広場で供されるのは、格安ながら、「あの」バドワイザーとは似ても似つかない美味しいビールだ。ドイツ人もチョコにビールを飲みに来るらしい。味を考えると、その安さは魅力だ。
グラスの底から無数に湧きあがってくる泡を眺めていると時のたつのを忘れてしまう。青い空が目に痛いぐらいだが、夏のチェコは、これですでに夜8時をまわっている。
オタカル2世広場に面したホテルに泊まった。夜10時になってやっと黄昏に…
旅先で写真を撮ると、旅から帰った直後は、記憶の中の風景のほうが写真より素晴しかったと思う。だが、時間がたってあらためて美しい場所の写真を見直すと、自分がこんなところに行ったのかと信じられない気分になることがある。
チェスケー・ブディヨヴィツェのオタカル2世広場もそんな場所だ。