プラハ城内にある旧王宮。建物自体は18世紀にロココ風に改築されているが、内部はそれより古い時代の様式を留めている。その王宮の3Fにある有名な大広間、それが「ヴラディスラフ・ホール」だ。
ヴラディスラフ・ホールの白眉は天井のリブだ。リブとは建築用語で「肋(ろく)」のこと。丸天井を肋骨のように補強・支持する部材だと考えるといい。
ゴシック建築は、紛れもなく天を目指す。空間も縦に長く伸びている。大聖堂の中を想像してもらうとわかると思う。それに対して空間が横へ伸びていったのがルネサンス建築だ。この大広間も、室内馬術競技などが行われていたというくらい、広々とした柱のない空間を見せる。ここのリブ天井自体は、後期ゴシックに分類される。だが、その下の空間は非常にルネサンス的だといえるだろう。
ブドウの房のように下がっているのがシャンデリア。ここに火をともして、さんざめく舞踏会が催されたのだろう。ヴラディスラフ・ホールに立って目を閉じると、着飾って踊る貴族たちの息づかいや声が聞えてくるような気がする。そしてそうした人々を包み込むようにして広がる天井のリブは、まさしく「花開く肋骨」だ。
フレスコ画があるわけでもない、リブだけが目立つ天井だが、リブの織りなす、その機能を超えた美しいラインに、ほとんどフェティッシュな愛情を感じた。
というワケで、フェティッシュにも3枚連続の天井の写真(笑)。これを見た友人が、思わず言った「レリーフ?」という感想。我が意を得たりといったところだ。
もちろんこれは浮き彫り装飾ではない。これはあくまでもリブだ。だが、ヴラディスラフ・ホールのリブは、レリーフ装飾に勝るとも劣らない視覚的な魅力を備えている。