旧市街広場はすごい数の観光客で賑わっていた。
喧騒から逃れるようにして、市民会館裏のホテル・パジージュへお茶をしに行く。パジージュとはパリの意味だという。
ホテルの1Fにある
カフェ・パジージュは、お皿や椅子のクッションの模様までアールヌーボーで統一されていた。内装の一部にはネオ・ゴシック風の装飾も見える。このうえなく豪勢な雰囲気で、トイレまでカーペット張り。まさしく古きよき時代のヨーロッパのカフェだ。
そして、ここで食べたケーキが最高だった。写真でいうと奥に見える昔風ケーキ。生地がざっくり粗いのだが、バサついているわけではなく、非常に風味が高い。小麦粉の美味しさがダイレクトに味わえる。しっとり柔らかでキメ細かな生地ばかりの日本では最近ちょっとお目にかかれない。ただし、チェコでは生クリームがダメだった。
このカフェ、雰囲気も味も素晴しいのだが、あまり賑わっていなかった。静かでいいといえばいいのだが、ここでくつろぐには、地元の人には値段が高過ぎるのかとも思う。カフェは本来ジモッティが憩うための場所のはず。だがプラハは、飛びぬけて美しい場所は観光客御用達みたいになっている。
旧市街広場もそうだ。広場は本来人々が集い、おしゃべりをしたり、本を読んだり、子供たちが遊んだりするための場所だ。たとえばイタリアでは、広場はそうした役割を今もしっかり果たしている。そうした役割を担うことで、歴史的な建造物をもつ広場に「今」という味が付加され、広場はさらに魅力的な空間になるのだ。だが、プラハの中心街はあまりに観光客に占領され、博物館化してしまい、地元民と街とが生み出す生活のにおいや活力というものがほとんど感じられないのだった。